すれ違う
(裏本編 「淑女への道」辺り)
城の廊下を歩きながら、ユナはよろついた足取りで恋人の待つ部屋へと急いだ。
メイドの教育係のマイヤから挨拶や食事のマナーやら社交ダンスやらをみっちり叩き込まれていつものようにクタクタだった。
廊下の角を曲がって一番奥の部屋が視界に入ると心なしか足取りが軽くなった。恋人の待っている部屋だ。
緩む顔で近付くと、聞きなれない声が部屋の中から聴こえた。
「・・・・・・っ!」
それが男の声ならユナもさほど気にならなかったのだが、聴こえてきたのは若い、女の声。
テリーに限ってまさか、やましい事なんて・・・と思いつつ、知らず息を潜めて聞き耳を立ててしまう。
「夜の時間は・・・・・・」
「・・・・・・っ」
こんな言葉が耳に飛び込んできた。ユナは息を呑んで、ドアにへばりついた。
「満足されてはいないのですね」
「・・・・・・!」
また、ユナは今度はゴクリと大きく息を呑んだ。
間違いなく若い、女の人の声。それから少し間をおいて
「あいつは慣れてないから仕方ないさ・・・色んな事に未熟なんだ。
今はオレもそれで我慢してる。あいつだって、あいつなりに一生懸命だしな」
これは、聴き間違えるはずもない、テリーの声。
心臓が ドキンドキンと 大きく揺さぶられ激しく高鳴りだした。
「ここにおられる間は私でよければ満足させてあげますよ。・・・テリーさんのお好みでしたら・・・ですが」
「・・・そうだな・・・頼む」
二人の会話が突き抜けた。
ユナは体の震えを必死に止めて、気配を殺したままゆっくりと引き返した。
体中に、やけに冷たい汗をかいていた。
角を曲がったところでうずくまる。また体が震えだした。
なんだったんだよ今の会話・・・・・・
廊下に響く時計の音をずいぶん聴いた所で
このままここで朝を迎えるわけにはいかないと、気力を振り絞って立ち上がった。
冷たい汗は乾いていないどころか、まだ滲み出てくるようだ。
きっと顔色も良くない。
それでもユナはなんとか足を動かして逃げ出した部屋の前に立つ。ドアノブを掴むと、意を決して開いた。
「遅かったな」
中には一人がけのソファに座って本を読んでいるテリー。
と、その傍らには・・・・・・若くて綺麗なメイドさんが立っている。年の頃はテリーとあまり変わらないように見えた。
「顔色良くないぜ?また嫌な事でも言われたのか?」
ユナは顔を振ってなんとか笑顔を取り繕った。
テーブルの上にティーカップが二つとポット、クッキー、その真ん中には花が添えられ、ティータイムが整っていた。
きっと自分がここに座らないと、ティータイムはずっと終わらないんだろう。
その場に居ることさえ辛かったが、ユナはテリーの前、テーブルを挟んだソファに座った。
メイドはにこりとしてカップに紅茶を注ぐと、美しいお辞儀をしてキャスターを押して出て行った。
紅茶のたまらなくいい香りが部屋に広がる。だが、ユナはそれに手をつける気分では無かった。
「飲まないのか?好きだろ、紅茶」
「・・・う・・・ん・・・」
心配かけまいと一応手にとって口に含む。きっとものすごく美味しいんだろうが、混乱した今の状況では味なんて良く分からない。
「さっきのメイドが淹れてくれた紅茶だ。うまいだろ?」
「・・・・・・」
さっきのメイド・・・。とたんに、先ほど聴いたショックな会話が駆け巡った。
”あいつは慣れてないから仕方ないさ”
”私が満足させて・・・・・・”
”そうだな・・・たのむ”
「・・・・・・」
目がぎゅっと閉まる。ユナは何も言わず音を立ててソファから立ち上がり、何も言わず洗面所へ向かった。
「・・・・・・?」
テリーは怪訝な視線で彼女を追いかけたが、首を傾げてまた読んでいた本の続きに視線を落とした。
ユナは、洗面所でじっと鏡を見つめていた。
メイド服とヘッドドレス。そこにはいつもと違う自分が映っている。
昨日も、一昨日も、その前も、テリーはオレを抱いてくれた。テリーと再会してから体を重ねない日なんて数える程しかなかった。
時間をかけて優しく抱いてくれる日もあった、激しくキスをして情熱的に抱いてくれる日もあった。
その全てをテリーは満足してなかったんだろうか。
ずっと我慢してたんだろうか・・・。
自分だけが気持ち良いだけで、テリーも気持ちいいんだと勘違いしてただけだったんだろうか。
甘い夜暇がすぐに思い出される。
そういえばオレはずっと受身で、テリーから快感を与えてもらうだけで・・・。
「・・・・・・」
ユナはそれからもっと昔の記憶を辿った。
同じ夜暇だが、それはテリーの時と違って思い返すのに閉じられた記憶の壁を一度壊す必要があった。
桶に溜まった水で顔を洗うと、かすかな記憶が紙片のようにバラバラと思考を流れていく
底知れない欲望を持った男たちが自分に求めた事・・・・・・・・・。
止めていた息を吐き出すとユナは耐え難い記憶から現実に戻ってこれた。
辛い記憶に心が軋んだが、今はそれより先ほどのテリーとメイドの会話の方がズシリと心に残っている。
古傷の鈍い痛みより、今出来た傷の方が新鮮な、鋭い痛みだった。
もう一度手と顔を洗ってタオルで拭くと、先ほどと同じ体制で本を読んでいるテリーに歩み寄った。
テリーはちらりと視線を寄越す。ユナは何も言わずメイド服のままベッドに座った。
本に栞を挟むとテーブルの上に置いて、テリーも隣に腰掛ける。
ユナの横顔はなぜかいつもと違ったように見える。
洗面所で髪を整えてきたのだろうか、前髪は綺麗に顔に掛かっていて、長くなった横髪は耳にかけられていた。
「・・・・・・」
昼間は眠っていた情欲が徐々に目覚めてきた。
その形のいい耳にキスをしようと顔を近づけた所でユナがこちらを向く
そして、
潤んだ瞳と濡れた唇で、ユナはテリーに口付けした。
「・・・・・・っ!」
濡れた、なめらかな舌がゆるゆると入ってくる。
いつもと違う展開に不意を突かれて力が抜けた。
誰かからこんなふうにキスをされるのは初めてじゃなかったが、こんなになめらかで心地いいキスは初めてで。
テリーのモノはみるみる硬く、熱を帯びていった。
ユナはそれを感じたのかキスをやめて、胸元のリボンを外し、ボタンを一つ一つ外していく。
ゴクリ と
テリーはその光景を見ながら息を飲み込んだ。
ユナは注意深く背中のホックを外して、服は脱がず器用に下着だけを外した。
一糸まとわぬ大きな乳房が、窮屈そうに服の間から揺らめいた。
「・・・・・・!」
テリーは初めての夜であるかのように動けず、それとは反対にモノは硬くてはちきれそうになっていた。
それでもユナの行為は止まらない。
ベッドから立ち上がってテリーの方を向いたまま、ヒールの高い靴を脱ぐと、スカートの中に手を入れて下着も脱ぎ捨てた。
そして何を思ったかスカートを口にくわえて、見えない部分を露出させる。
ガーターベルトにニーソックス。
下着は脱いでいるので、ユナの秘部だけが露になった。
「・・・ユ・・・・・・ユ・・・ナ・・・」
ようやくテリーは口からそれだけを発せた。体中が熱くてたまらないのに、口の中はカラカラに渇いていた。
ユナは赤い顔と潤んだ瞳で自分の乳房を確かめた。
硬くなった先端を注意深く指でつまむと自ら気持ちよさそうに目を伏せる。
「ふ・・・ん・・・」
色っぽい、喘ぐ声。
手で自らの乳房を揉みながら
もう一方の手で濡れた秘部に触れた。クチュクチュといやらしい音が漏れる。
「ん・・・っは・・・っ・・・ぁ・・・」
スカートは口にくわえられているので、秘密の行為がハッキリと目に映る。。
紅潮した顔も、指使いも、絡みついた愛液も、惜しげもなくテリーの前に晒された。
「は・・・ぁ・・・っ」
心臓の高鳴りが止まらない。今すぐにユナの体に触れたくてたまらないのに
”その行為”の続きが見たいと言う欲望が、体を押しとどめた。
ユナはイスに座ってそのまま足を広げてくれる。顔と同じように紅潮した秘部は呼吸するように
ゆっくり動いていた。
「ん・・・っ・・・んん・・・」
ユナは、自らの指をその中に挿れる。
「ふ・・・んん・・・ん・・・!」
人差し指をなんとか全て押し込めた所で、目が合った。
潤んだ瞳で、何かを訴えて、そして今までになく色っぽく艶やかな顔で
「テ・・・テリー・・・」と自分の名を呼んだ。
テリーは今までにない程、濃密な欲情を感じて知らず息が荒くなる。
「っ・・・ふ・・・」
ゆっくり愛液の絡みついた指を抜くと、
あふれる欲情を解放せずそのままにして、床に膝をつき、テリーを見上げた。
「・・・・・・・・・」
狼の目の前に差し出されたウサギのようだ。
限界まで触発されて、一押しされただけで衝動が爆発しそうだった。
荒く息を吐きながら、ベルトに手を掛けるが、先にユナの手がベルトに触れ、ズボンを脱がせた。
「・・・・・・っ!」
テリーのものをそっと確認して、柔らかな手でゆっくり確かめる。
「良かった・・・硬くなってる・・・」
何故かほっと安心したように呟いて、モノをズボンから出すと両手で愛撫した。
「お前・・・何・・・・・・」
先ほどの行為を目の当たりにして
体中の欲を集めてしまったかのように大きくなってしまったソレは、少し触れただけでビクリと反応する。
「・・・く・・・・・・・!」
このままではすぐに出してしまう。
テリーはなんとか立ち上がろうとするが、体に力が入らない。
ユナは上から下まで色んな場所を撫でてくれると、我慢できず溢れた液をぺろっと舐めて、先端からゆっくりくわえた。
「・・・・・・・・・っ!!」
大きなテリーのモノはユナの口に収まりきれないほどだったが、それでも彼女はなんとか全てをくわえてくれ、
口の中でテリーのモノを弄んだ。
「・・・・・・っっ!!バカ・・・やめ・・・・・・!!」
ユナはまるで聞こえていない素振りで行為を続ける。
くわえる事が苦しくなると、一旦口を外して大きな胸でテリーのモノを挟んだ。
そして小さな舌で下から上へと優しく舐めてくれる。
「ユナ・・・だから・・・もう・・・」
上半身をようやく起こして行為をするユナに目を向ける。
ただでさえ、理性の効かなくなりそうなメイド服、ヘッドドレスがやけに似合っていて、乱れた衣服から大きな乳房が露わに揺れている。
長めのスカートも乱れ、薄いペチコートが汗で太ももに張り付いていた。
よつんばいになって、必死に舐めている姿にクラクラする。
「・・・・・・テリー・・・気持ちよく・・・ないか・・・?」
久しぶりに聞いた気がする。ユナの、ユナらしい声。
テリーはぎゅっと目を伏せた。これ以上意識したら、今すぐにでもイってしまいそうだった。
「もうやめろ・・・お前にはこういうのは合わない・・・」
「・・・・・・」
テリーの言葉に、ユナは酷く寂しそうな顔をした。
そして、両手でぎゅっと胸を寄せて、もっと強くテリーのモノを挟んだ。
「・・・・・・っ!」
再びテリーの最大限に大きくなってしまったモノを咥える。
「む・・・んぐっ・・・」
なんとかそれを口に押し込むと、口を動かして上下運動を繰り返してくれた。
「は・・・ぁ・・・ん・・・ぐ・・・むぐっ・・・」
苦しそうに自分のモノを咥え、それでも必死に快感を与えようとしてくれるユナの姿。
もう耐えられ無い
「ユナ!悪い!出る・・・・・・!」
テリーの声に驚いて口を離してしまった瞬間、舐めていたモノの先端から液が勢いよく飛び出して顔に飛び散った。
「・・・わっ!」
小さく悲鳴を上げてユナは顔を振った。幸い目には入らなかったらしい。
「ゴメン!シーツ汚れちゃった!」
謝るのはオレの方だろう。と言いたかったが気恥ずかしさで何も言えない。
ユナは精液で濡れたテリーのモノを舐めて綺麗にしてくれた。
「ゴメン・・・口離すつもり無かったのに・・・」
手で顔を拭ったが、白濁液はまだ髪や額に飛び散っていた。
これが限度じゃないかと思わせる程、その姿は独占欲をあふれるほど満たしてくれた。
テリーはそんな感情を抱いている自分に気付いて、我に返った。
「それより顔を洗ってこい。シーツはオレが綺麗にしておくから・・・」
「・・・・・・ん・・・」
ユナはまた、悲しそうな顔をした。
「・・・どうした・・・?」
「やっぱりオレじゃテリーを満足させられないのか・・・?」
「・・・・・・っ!」
思い切りイかせておいて何を言ってるんだ。という言葉は飲み込んだ。
ユナはぎゅっと唇を噛むと、テリーの不意を突いてベッドに押し倒した。
足を広げて驚くテリーの上にまたがる。
「・・・・・・!!」
男根の代わりに、またスカートとペチコートを口にくわえた。
再び晒された陰部は触らなくても分かるほど愛液があふれ出している。
「お前・・・なに・・・を・・・」
テリーの声がうわずる。
ユナは腰を少し浮かせると、一度イってもまだ収拾の付かないテリーのモノを、自分の中に挿れた。
「・・・・・・っ!」
ぬぷっ・・・といういやらしい音を立てて、なめらかにそれはユナの中に収まった。
「ふっ・・・うっ・・・」
口元から外れたスカートを、今度は両手でつまみ上げる。
そして、体をゆっくりと上下させた。
「っんあっ・・・あっ・・・!」
ユナは気持ちよさそうに声を上げる。
「ご・・・め・・・っ・・・テリーに良くなって欲しいのに・・・っ」
唇を噛みしめて、もっと激しく体を動かした。
「・・・・・・くっ・・・あっ・・・はっ・・・あっ・・・」
大きく揺れる乳房といじらしいユナ、目の前でそれを見せつけられて、言葉が理性の壁を突き破って漏れる。
「テ・・・リっ・・・テリ・・・っ!」
ユナは首を振って快感に耐えた。
テリーより先にイってはいけない。という何故か妙な使命感が彼女を征服していた。
テリーはと言うと、初めての事に理性の壁は崩壊しつつあった。
フェラも騎乗位も初めてじゃない。
今まで色んな女を抱いて、男に抱かれた。
中には凄いテクニシャンも居て、肉体的に気持ちいいと思う事もあった。
だがいつも心臓は冷たく乾いていて
「テ・・・リー・・・っ・・・あっ・・・うっ・・・」
そんな昔とは全く逆に 今は心臓がたまらなく熱い。
ものすごい勢いで全身に血が巡っているせいか、体は熱を持って湿っていた。
そのせいか、体中が敏感になっていて、今までのどのフェラより、騎乗位より、遙かに気持ち良かった。
相手がユナだとこんなにも違うものなのか、と思うと、胸の奥がますます焦げる。
ユナの気持ちを最後まで汲んでやりたかったが、今のテリーには無理だった。
なんとか上半身を起こし、驚くユナに深くキスをして、強く抱きしめて、また違う体位で自ら自分のモノを押し込んだ。
「ひゃぁっ・・・!」
最奥まで押し込まれて、快感で体が一瞬震える。
「愛してる・・・・・・お前で満足出来ないわけないだろ・・・!」
「あっあっ・・・っ!」
テリーは激しく腰を動かして、もっと奥まで突き上げると
「やっ・・・あああああっ!!」
ユナはすぐにイってしまった。テリーはフっと笑って自分もユナの中にぶちまけた。
「ん・・・あっ・・・ふあぁ・・・っ」
体の外も中も精液まみれになってしまったユナ。
今度はテリーがユナをベットに押し倒した。
「・・・・・・満足させてくれるんだろ・・・?」
荒く息を吐きながらも テリーは余裕の有る笑みを浮かべた。
逆に余裕の無くなってしまったユナは困惑して見つめ返すだけだった。
「もう一回いくぜ?」
いつものようにユナの足を大きく広げ、テリーの精液を飲み込んだ秘部に目をやる。
「テ・・・テリー・・・」
潤むユナの瞳と秘部。テリーはゾクリと興奮で体が震えた。
チュプチュプと滑らかな音を出して、ユナはテリーのモノを飲み込んだ。
「はっ・・・あっ・・・!」
広げた足を手で持ち上げ、奥の方まで突いた。
「やっあっあっ・・・!!!」
愛液と精液の混じったものが厭らしい音を出してテリーをますます興奮させた。
「んぁっあっ・・・んん・・・テリィ・・・っ!はっあっあっ・・・っ!」
「・・・・・・くっ・・・・・・うっ・・・」
膝下まである長いスカートと服から零れた胸が行為で絶え間なく揺れている。
あまりの気持ちよさに視界すら霞んでくるようだ。
しばらく甘い蜜を堪能した後、テリーはユナの中で三度目の射精をした。
「・・・お前、さっきのメイドとオレの会話聞いてたんだろ?」
「・・・・・・・・・っ!!」
タオルで顔を拭いていたユナが明らかにどうようしているのが見て取れる。
それを悟られないようにユナはもう一度タオルを顔に当てた。
「なんの事・・・?」
「とぼけるなよ。夜の時間は満足出来るとか、出来ないとか・・・そんな話だ」
「-------っ!」
今度は手からタオルが落ちた。拾い上げようとするユナの手を掴んで、自分の方に引き寄せる。
「だからこんな事したんだろ?」
「・・・・・・うっ・・・」
図星過ぎて何も言えなかった。テリーの隣に腰掛けて、はぁぁ、とユナは息を付いた。
テリーは何故か楽しそうに
「・・・バカ」
と呟く。ユナはいつもよりバカにされたように感じて、涙ぐんで口をとがらせた。
「バカとはなんだよ・・・っ!オレだって、テリーに良くなって欲しいって思ってるのに!慣れないとか、未熟だとか、
テリーがオレの事そんなふうに思ってたなんて知らなかったから・・・。オレは気持ちよくても、テリーはそうじゃなかったなんて
考えたら・・・悲しいに決まってるだろ!?」
大きな瞳は今にも泣き出しそうだ。
テリーはそんな必死の訴えを聞いて、また笑った。ぶわっとユナの瞳に涙がたまると
「カンチガイ」
悪戯っぽくそう言った。
「・・・・・・・・・え?」
「お前の大げさなカンチガイだ。夜の時間って言っても色々あるだろ?」
涙を浮かべて固まるユナ。そんなユナをいつまでも困らせてやりたい衝動に駆られるが、あまりに可哀相に感じたので
言葉を続けた。
「オレたちが言っていたのは、夜長を楽しむ趣味の時間のことだ。読書とか、物書きとかな」
「・・・・・・・・・」
予想通り、止まって、目を丸くして
「お前、紅茶とかハーブティーとか、好きなクセに淹れるの上手くないだろ?だから、その話だ。
趣味の時間を楽しむ為の、紅茶を淹れるのが下手だから、それで夜は満足出来るのか?って・・・。
それに、ユナは慣れて無いから仕方がないって返しただけだ。多分今思うとこの辺りから聞いて勘違いしたんだな。
最後にあのメイドも、それじゃあ私が満足させてあげます。・・・だもんな」
クツクツとテリーは大笑いしそうになるのを耐え、小さく笑った。
ユナは両手で顔を覆い、まさに愕然としていた。
「だから心配するな。そっちの意味でお前に満足してないわけじゃない」
言おうかどうか迷ったが、あまりにユナが不憫に見えて本音を言った。
「・・・ほんとか?」
「・・・二度は言わないぞ」
ようやくユナは少し嬉しそうな顔に戻った。そして、再び肩を落とした。
「紅茶とその話間違えるとか-------・・・オレってほんと・・・恥ずかしいなあもう!」
早とちりした事もそうなのだが、テリーを満足させようと必死にやった行為が更にユナを追い込んだ。
「ああもう恥ずかしい--------!」
顔を押さえて悶えるユナの肩に手を回す。
「まぁ、そう言うなよ」
耳元に唇を寄せて
「良かったぜ・・・?」
「---------っ」
低い声が突き抜ける。
「たまには悪くないな、こういうのも」
突然ユナはたまらなく恥ずかしくなって、
「もっ、もう、からかわないでくれよっ!」
と真っ赤な顔でテリーを見る事も出来ず沐浴場へ足早に駆けて行った。
と・・・
「わあっ!!」
「どうした!?」
慌ててテリーが追いかけると、ユナは鏡の中の自分にビックリしているようだった。
「・・・メイド服のままだった!!」
・・・今気付いたのか?と突っ込みたかったが、着ている本人は精神的にも追い込まれていて気付かなかったのだろう。
メイド服は精液で汚れて、激しい行為でシワクチャになっている。
洗えばいいだろう。と、投げかける前にユナが言った。
「これ一着しか持ってないんだよ・・・っ!明日までに渇くはずが無いし、どうしよう、マイヤさんに怒られる-------っ!」
「そんな事か」
テリーは呆れて沐浴場を後にした。
「適当に言い訳すればいいだろ?飲み物がこぼれて汚れたとかなんとか」
「うっ・・・」
帰ったらすぐにハンガーに掛けて形を整えておくように言われた事を思い出す。ペチコートとニーソックスは毎日洗うので替えはあったが
服の方は一着しかない。ヘッドドレスも同様だ。そこにはべっとりと行為の後が付いている。
とにかく洗わなきゃ・・・。
と、桶に水を溜めていると、ドアをノックする音が聞こえた。
テリーは慌ててシーツを整えるとドアを開ける。そこには先ほどのメイドが立っていた。
「お茶の方、お下げに参りました」
「あっ・・・ああ・・・」
来たと同時にキャスター付きのワゴンを押して中に入る。ニコニコしながらティーカップとポット、クッキーを下げると
向き直って美しすぎるお辞儀をした。
そして
「私ので良かったらお貸ししましょうか?メイド服。ユナ様とは背丈も同じぐらいですし、その点では問題無いと思いますので」
「-------っ!!」
沐浴場でドンガラガッシャンと言う騒がしい音が聞こえ、しばらくして部屋着姿のユナが飛び出してきた。
急いで着たせいなのか裏返しだ。
「あっ・・・その・・・っいやっ・・・なんでそんな・・・・・・っ」
メイドは表情を崩さずニコニコして
「それでは後ほどお持ちしますね。もしお取り込み中でしたら、また出直しますので」
確信には何も触れず、美しい立ち居振る舞いで音も立てずドアを閉めて出て行った。
「・・・聞こえてたのかな・・・」
「・・・・・・そうかもな」
「・・・・・・・・・」
沈黙が、その場の空気を支配する。
「・・・オレ、あのメイドさんに比べたら、やっぱりまだまだ全然未熟なのかもしれない・・・・・・」
ぼそりとユナは呟いた。