『私が彼を好きな理由――another ver.』



太陽はすでに地平線へと落ち、辺りは静まり返っている。
ただでさえ薄暗い森の中、月や星の光だけでは到底視界が利かない。
そんな中、とある二人+一匹がぽつりと火を囲んでいた。青年――テリーは剣の刃毀れはないか丹念に確認し、一匹――スライムのスラリンはスヤスヤと夢の中。
そして、もう一人はというと。

「よしッ!できたぞ!」
そう、もう一人――ユナは食事の準備をしていた。

「…やっとできたのか」
テリーはやれやれ、といった様子で呟くと、先程まで睨むといっても過言ではないほど見ていた剣を鞘に納めた。

「悪かったな。初めての料理で戸惑ったんだよ」
ユナは少々悪態をつきながら、皿に料理を盛っていく。その様を後ろから見ていたテリーはニヤリと笑い「で、」と口を開いた。

「前回は卵焼きならぬ焼き卵、その前はよくわからないキノコと毒消し草のスープで…あぁ、前は『それぐらい、オレだって(多分)作れる』と言いながら、オレの知っている目玉焼きとはだいぶ懸け離れたものが出てきたことも…」
「う、うう、うるせーッ!!!」

その『目玉焼き事件』の時はテリーが普段では絶対に見られないほど大笑いし、理由が分からず最初はポカンとしていた『目玉焼き(仮)』の作者ユナ本人も、後にその間違いを理解してからは自分の料理の下手さ故の失敗だと思いつつも、一つの恥ずかしい記憶として頭の片隅に残っている。

「それで、今回の出来は?これだけ待たされたんだ、ちょっとは期待してもいいよなぁ…ユナ?」
「…ッ!」

パチッと、一際大きな音をたてて薪が爆ぜた。ゆらゆらと燃える炎がテリーと、そしてユナの髪を煌々と照らし出す。
しばしの沈黙の後、自分を見つめる菫色の瞳にからかいの色を見たユナは、覚悟を決めてテリーの前に皿を差し出した。

「…………」
「な、なんだよ…」
「…いや、相変わらず原形を留めないものしか出せないのかと思ってな…」
「そ、そんなに文句言うなら食わなきゃいいだろ!」

出来るだけ美味しく食べてもらいたいと、必死に食事を作った本人の目の前で「まずい」を連発するテリーに、ユナはそっぽを向いて反論する。
周りの反応を見れば、ちょっと…いや、あまり自分は料理が得意ではないのぐらいすぐにわかる。しかし、今回はテリー自身が『今日はお前が料理を作れ』と言ってきたのだ。それで「まずい」とは…ケンカを売っているようにしか思えない。

すっかり機嫌が悪くなったユナは、文句を垂れるテリーを無視してそっぽを向いたままで自分の分の食事を食べ始める。


分かっているのだ、苦手なことぐらい…


宿で出される食事や、ほんのちょっとした店先の軽食、この間ちらっと見えた一軒の民家の食卓に並べられた料理。それらと自分が作ったものには雲泥の差がある。分かっているのだ、しかし…
――これは、どうしようもないだろ…ッ――

「ごちそうさま」

先程からとうとう「まずい」とすら発しなくなったテリーが、唐突に口を開いた。カラン、と食器が置かれる音がしてふとユナはその方向へ目を向ける。
そこには…

「……!」
「オレはもう一度この辺りを見てくるから、お前は片付けでもしてろ」

「…すぐに戻る」と付け加えすっと立ちあがったテリーは、そのままユナに目もくれずに森の中へ姿を消した。それを見送ったユナはソロソロとテリーが残した空の器を拾い上げる。

「…あんなに、文句ばっかだったのに…」
――完食だなんて…――

ふと思い出してみるとあの焼き卵の時はともかく、キノコと毒消し草のスープだって、あー…目玉焼き(?)だって、なんだかんだ言いながら彼は食べていた気がする。

もう一度、ユナはテリーが消えた辺りを見た。まだ夜は長い。

寝ているスラリンと共に残されたユナは、少し赤くなった頬を誤魔化すように冷たい夜空を見上げていた。

「…へへ。ありがと、テリー」

…それが、私が彼を好きな理由。


Fin…



:統 潤さんから頂きましたSSです!
コミックの「私が彼を好きな理由」に沿って作成して頂けたと言う事でっっ;;;;!
まさか漫画を元にSSを作成して頂けるとは コミック上げた当時は こんな日が来るとは思ってもなく……;;!!
細部の描写やキャラの感情まで細かに再現して下さいましてこここここれは うれしいいいいいいい!!!!!!
うわああああ こんな事なら コミックの方 もっと丁寧に!ちゃんと練って描けば良かった・・・!と後悔していますっっ くうううっっ!

他のログ絵や漫画のシーンも織り交ぜて下さいまして 嬉しさ止まりません・・・っっ!!!!焼き卵(笑)そうだ あれは 焼き卵だ笑!
あと もう ほんとに ユナがユナらしくて可愛くて!! テリーさん格好良すぎて!!!ひたすらニヤニヤするしか無かったです!!

自己満足でどんどんサイトにあげていってただけでしたので 萌えを感じて下さいまして モチベもめちゃめちゃ上がりました!
ぶわあああああああん;;;;ありがとうございました!!!!
わああああ ぐおおおお ほんとに コミック描き直したいです・・・っっ つかリメイクしたいいいいい・・・!!!