『制御の仕方』 それはある日突然起こった。 ミレーユ、バーバラと街を散策していた時に、風情の良い青年が話しかけてきた。つまりナンパだ。 二人とも人目を惹く容姿なので、珍しくない光景である。 今更特別扱いされたいのでもないが、同じ女性であるユナが多少なりとも感情を抱いているのは事実であり、人知れずため息をついていた時だった。 「へえ、可愛い子じゃん」 背の高い青年が声をかけてきたのだ。一瞬、呆けたユナが慌てて後ろを振り返っても誰がいるでもなく、つまり、相手は自分に間違いない。 「……えっと……オレ?」 「当たり前じゃないか。しかしきみ、変わってるね。けどそういうのもいいよな」 「何だお前。見てるとこ見てるじゃん」 「バーカ」 彼らのやり取りをミレーユとバーバラは驚きながら聞いていた。ユナに声をかける男性を見たのは、自分達が知る限りだと初めてなはずだ。 扱いに慣れていないユナは、その後も盛んに話しかけてくる彼らを交わすことすら出来ず、最終的にはミレーユのおかげで場を切り抜けたのだった。 ――――…… 「――ってなわけで、本当にビックリしたのよ!」 夕食の席で昼間の出来事を事細かに説明しているのはバーバラだ。 頼みもしていないのに、こうなったら彼女を止めるのは不可能だ。無論ユナが言ったところで効果は無く、表情をひきつらせるのが精一杯の抵抗である。 「お前がナンパされるなんてな」 「ちょっと意外だよな」 「あら、ハッサンにウィル。どこに目を付けてるのかしら」 ミレーユは笑顔だったが、瞳が笑っていない。男性陣は背中に冷たいものを感じた。 「ユナさんはおキレイですしね」 「でしょうでしょう! さすがはチャモロ、良くわかってるじゃない!」 バーバラに背中を叩かれたチャモロは、咳き込んだ。 彼女はまるで自分のことでもあるかのように話をしており、それは素直に嬉しくもあったが、いつまでも自分の話ばかりされても困惑してしまうのがユナだ。 ――まして、まるで乗ってこない人物がいるとなると余計に。 その人物である剣士テリーは黙々と食事を終え、席を立った。 「あらテリー、まだおかわりあるわよ」 「いや、いい」 姉の気遣いにも視線を合わせようとしない。先程まで勢いよく口を動かしていたバーバラは勿論、ミレーユやウィル達もその態度を不思議に思った。 食後、ユナは一つの扉の前で深呼吸をしていた。テリーの部屋へ通じる場所だ。 しばらく思案した後、気合いを入れてドアを叩くと、すぐに返事があった。 「ミレーユさんに頼まれてさ、デザートを届けに来たんだけど」 「……いらない」 「そんなこと言うなよ。わざわざ買ってたらしいんだ」 しかしいつまで待っても応答は無く、あきらめたユナが引き返そうとしたところ、ドアが開いた。 テーブルの上に果物が盛られた皿を置きながら、ユナはテリーを纏う雰囲気が普段と異なるのを感じた。 「テリー? どうかしたのか?」 「別に」 「そうか? 様子がおかしい気がしたけど、気のせいかな」 「そんな下らない話をしに来たのなら、すぐに出てってくれ」 「でも悩み事とかあるなら、オレで良ければ話を聞くぐらい出来るしさ」 「……ユナ」 呼び掛けられて、ユナはドキリとした。テリーが発した声に感情は一切無いも同然だったのだ。 「聞こえなかったのか。オレは出て行けと言った」 「……っ! わかったよ。ごめんな邪魔して」 ユナは胸を鷲掴みにされたような感覚に陥ったが、こうなったところでテリーが考えを覆したりしないのも理解している。 だてに長い間共に旅をしていたわけではないのだ。 ユナが出て行った後、テリーはテーブルの上の果物に目をやった。 食べやすい大きさに揃えて盛り付けされた林檎はその昔、ガンディーノで暮らしていた頃にミレーユと競って食べていた。 あの頃のミレーユは、テリーが喜ぶようにとうさぎの形に切ってくれた。しかし現在、それは一つも見当たらない。 ――と、中央が不自然に盛られているのに気づきいくつか除けると、出て来たのは何とも不格好な形をした林檎。かろうじてうさぎとわかる程度の代物だった。 もちろん誰がやったかなんて、わかっている。ユナだ。 本当はあんな態度を取るつもりは無かった。 しかし、自分の知らぬ所で起きた出来事は、テリーの心に想像以上の影を落としていた。 それを認めたくはなかったが、うさぎ――よりも、クマかブタに近いように見える――の形をした林檎を口にしたテリーは、ほんのわずかに微笑んだ。 甘酸っぱい味覚のせいなのだろうか。それとも……。 明朝、フォローを忘れないようにしないといけない。不格好な林檎の感想と共に――。 :「ひだまりのうた」の空野さんより、誕生日お祝いに頂きましたテリユナSSです!! 空野さんリクわがまま聞いて下さり本当にありがとうございました!空野さん文章のテリユナ…!!こっそりむちゃくちゃ嬉しいです<><>!!! もうもう ブワーーーーーッッとテリー熱沸騰しました!!!ナンパ男子たち良い仕事しよる…^///^!! テリーさんの心境にニヤニヤ止まりませんでした!!萌えツボ押されまくって立てません!ちゃんと二人の事分かってらっしゃる空野さんすごい…! 萌え頂けただけでなくモチベまで上げて頂きました;ii; ありがとうございました^///^!!! |