▼傷痕2...


 夜。湯浴みから戻ったユナは、また薬を塗ってガーゼを取り替えた。
薬のおかげか大方腫れは引いて、右目は半分くらい見えるようになっていた。

青いマントを備え付けられた椅子に掛け、ベルトを外し服を脱ぐ。
そして窮屈なサラシをゆっくりとほどいていった。
豊満な乳房がだんだんと露わになる。

ユナはこの、大きな胸があまり好きじゃなかった。
サラシで押さえつけ、必死で成長を止めようとしたが願い虚しく大きくなるばかりで。

「男の人って大きい方が良いのかな…」

 ふと、そんな事が頭を過ぎる。テリーもそうなら、この胸も少しは気にならなくなるかもしれない。

サラシを全て解いて、なんとなく後ろの鏡に目をやる。
飛び込んできたその背中にはギンドロに居た時に付けられた傷が今もなお、ハッキリと残っていた。

一番目立つのは、脇の下あたりから背骨に沿うように残っている大きな刀傷。
腰のあたりを斜めに何本も走るミミズ腫れは鞭で仕置きをされた時の傷だ。
所々に煙草を押しつけられた火傷の跡も有る。
ギンドロで娼婦として働かせられていた証だ。
証はユナの体と心にハッキリと残っていて、消える事は無かった。

生傷絶えなくて、こんなに傷が残ってて、何十人、何百人っていう男に抱かれて-------…
こんな体で…触れて欲しいなんて……

「あ〜…もうだから考えんのやめようって言ってるのに……!」

 頭を振って枕元にあった部屋着を乱暴に取った。
下着も着けずにそのまま素肌に羽織る。

コンコン。

突然聞こえたノックの音に弾かれたように振り向いた。

「ユナ…居るか…?」

 程なくドアを開けたテリーと目があって、またお互い動きが止まる。
羽織ったばかりの部屋着は今にも体からずり落ちそうで
ユナの胸の膨らみに思わず目が釘付けた。

「わっ、悪い!」

 ハっと我に返って、テリーはドアを閉めた。ユナもようやく思考が動き出す。
慌てて部屋着を着込んで、バタバタとドアを開ける。テリーはまだ少し赤い顔で目の前に立ちすくんでいた。

「どしたんだ?何か用か?」

 努めて普通にユナが問いかける。テリーは気持ちを落ち着かせるように咳払いをして
右手を差し出した。

「…ん?」

 揺らめくランタンの光に照らされるそれを凝視する。それは女性用の赤いクシだった。

「今日、東街に行って装飾屋の前を通りがかったんでな、たまたま目について…買った。
……お前に」

「えっ--------」

 一瞬、耳を疑う。差し出すその赤いクシを迷いながらも受け取る。
テリーは恥ずかしそうに言葉を続けた。

「確か、お前、こういうの欲しがってただろ?…たまたま金が余ってたからな」

 言った事を覚えてくれていた事も、自分の為に買ってくれた事も
赤い色をした綺麗なシルエットを持つクシも、嬉しくて仕方ない。
やばい、嬉しくて泣きそうだ。

「ありがとう…テリー……ずっと、大事にする……」

「…ああ…」

「…………」

「…………」

 視線が絡み合う。見つめるだけじゃ足りない。
お互いの体温を求めようと、二人は自然と距離を縮めた。

視線を辿って、惹かれ合おうとしたその時
テリーはその束縛から逃れようとして、視線を外した。

「…じゃあ、明日な」

 先ほどの間が嘘のようにいつものテリーに戻り、さっさと自分の部屋へと戻っていく。
取り残されてしまったユナは行き場の無い視線を床へと落として扉を閉めた。




明かりも付いていない部屋。満月の青い光が室内で項垂れている少年を照らす。

危なかった……。

よくあそこで押さえたと自分をほめたくなる気持ちにかられた。
あのまま流されていたら、間違いなく彼女を押し倒していたに違い無い。
それほどテリーは、彼女に触れたい欲求を我慢していた。

視界に、ユナの豊満な胸がちらついている。それはしばらくテリーの脳裏から消える事は無かった。


しばらく経って月の位置が変わった頃、テリーはまだ火照っている頭を冷やそうと
宿のベランダに出た。宿には珍しく、歩けるほどのベランダが備え付けられている。
寡黙な主人と合わせ、そんな部屋の間取りもいつもここを使う理由だった。

質素な扉を開けベランダへと出る。予想以上に明るい月の光と、またも予想外な人影が出迎えた。
火照った体を冷ますどころじゃない、隣には部屋着を羽織ったユナの姿。
ここはベランダが隣の部屋とつながっていた。そう思い出したのも時すでに遅し。

「あ……よっ、よう。今日はなんかよく会うな」

 テリーに気付いて、なんとなくぎこちない笑顔を返した。

「そうだな…」

 テリーはせいっぱいユナと距離を取って、冷たい夜風を感じる。
それでも体はさめる事は無く、逆に火照っていった。
このまま部屋に戻るのも、避けているようでバツが悪い。
体中の熱を吐き出すように息を吐くと、テリーはユナとは逆方向へ顔を背けた。

「あのさ…ずっと聞きたかったんだけど…テリーは今、何の目的で旅をしてるんだ?」

 そんな間が耐えられなくなったのか、ユナの方から口を開いた。
突然の質問に虚を突かれる。
情けない話、全く考えてもなかった。
ユナと再会する為に必死で、ようやく願いが叶った今はと言うと
特に何の目的も無く、心地良い空気にただ身を任せていただけで。

「目的…」

 言葉の先が思いつかない。
もしかしたら、もう自分には旅をする目的なんて無いのかも知れない。
ずっとこのままユナと一緒に居られたら…。
自分の奥底に有る願望を垣間見て、一瞬胸が空く。
ユナが自分にとってどれだけ大切な存在なのか 思い知らされた。
そう思うと体が更に熱さを増す。それを誤魔化すようにテリーは質問を返した。

「……そういうお前は何か有るのか?何処か行きたい場所でも?」

 ユナはうーんと考えて

「オレは…前と同じで、テリーについて行くよ」

 テリーと一緒に居たいし…。無言でそう語る、その想いはテリーにも伝わった。

「変わらないな、お前は」

 完全に自分の想いを読まれている事を知って、気恥ずかしくなったのか言葉を探すと

「アークボルト…」

 見上げた夜空があの日の星と似ていて、その名が声に出た。

「そう言えば、アークボルトのブラスト兵士長!テリーとまた手合わせしたいって
言ってたよな?最近テリーの戦ってる所見てないしさ、久々に格好いい所みたいよ」

 無邪気にそんな言葉を投げかけた。

「そんなにたいしたものじゃないだろ…行くほどの事なのか?」

「テリーが本気出して戦ってる所とか滅多に見ないじゃないか。
すっごい格好いいんだぜ!いつも格好いいんだけど、いつも以上に!」

 笑顔でそう言い切った後、我に返ってハっとした。
なななに言ってたんだオレ!何度格好いいって連呼してるんだよ!

「…そうか…?」

 テリーは恥ずかしそうに少し笑ってくれた。
うっ とユナの口から声が漏れる。滅多に見ない無邪気な微笑みはユナの心を掴んで離さない。
喉が詰まって瞳が潤んでくる。
そんな時、一際冷たい夜風が空から吹き付けた。

「いてえ〜……」

 正面から吹き付けた風はガーゼをすり抜けて傷に染みる。
痛みは一瞬でいつものユナに引き戻した。

「大丈夫か?」

「うん、まぁ…自業自得だし…」

「ガーゼ取れ掛かってるぞ、見せてみろ」

「えっ!いやっ!ちょっと待って!いいいいいよっ!自分でやるから」

 伸びたテリーの手が自分に触れる前に距離を取る。
後ろを向いて、入念にガーゼを付け直した。

「こんな顔見られたくないって、言ってるだろ…テリーは良くても、オレは嫌なんだから…」

 言いかえされる前に、そう付け足す。

「強情な奴だな」

 テリーはユナの方は向かず、ベランダから街並みを見下ろして呟いた。

「だ、だって…嫌われたく…無いし…」

 ぼそりと言った言葉はテリーの耳に届いていた。

「それぐらいの事で嫌うわけないだろ。そんなに簡単にお前を嫌いになれたら
どんなに楽だったか-------…」

 そこまで言って、言葉の意味に気付く。ユナも遅れて言葉の意味を飲み込めた。

「---------…」

 突然の沈黙。こいつを嫌いになれたらどんなに楽だっただろうか。
大切な者を失う恐怖に耐えられそうもなくて、自分の想いを押し込んで過ごした日々。
いっその事、自分の事を嫌いになってくれたら良いと思っていた。
そう思って何度も辛辣な言葉を浴びせて突き放した。
でも、こいつはずっとオレの事を想ってくれて、昔も今も---------…

「…ホントに、強情な奴……」

「…え…っ」

 見えない力に押されるよう、テリーは力強くユナを抱きしめた。
天空人特有の物なのだろうか、少しひんやりとした肌は酷く心地よく感じた。

「…テ…テリ…っ」

 信じられない抱擁はユナをまた、女へと引き戻す。
体中の熱が一気に上気する、そんなユナをますます混乱させるかのように
テリーはユナに口づけた。

「---------…っ!」

「悪い、我慢出来そうにない」

 口づけを止めて

「抱いても…良いか…?」

「--------っ!!」

 自覚してるつもりだった。
ユナの心の傷を知っていながらこんな事を言うオレは
性欲を抑えられないあの連中と同じだって事を。

自覚してるつもりだったのに。止まらない-------……
触れたくて、抱きたくて、どうにかなりそうだった。

「---------…」

 無言のまま固まるユナに、不安が過ぎる。
このまま、欲望に流されて抱く事は簡単だったがそれで良いのか…?
オレは、こいつの気持ちも考えないでまたこいつを傷つけようとしてるんじゃないのか?
突然、理性の方が押し戻される。

「わ…るい…おかしな事を言ったな、忘れてくれ!お前の気持ちも考えないでこんな…」

「……って」

 逃げるようにその場を去ろうとするテリーをユナが呼び止めた。

「オレの気持ちって…オレは…オレは…テリーの事が好きで、ずっと、テリーに触れて欲しくて…」

 ようやく言葉を押し出した。テリーが驚いて振り返る。

「でも、こんなオレで、良いのか?テリーは強くて格好良くて、女の子の憧れの的で…。
でもオレは今だってこんなに顔腫れてるし、体中傷だらけだし、全然女の子らしくも無い。
それに…オレは、あんな所で働かせられて………」

 テリーは言葉の代わりに行動で返した。
唇を噛みしめてユナを抱きしめる。そのままユナを抱き上げて自分の部屋のベッドへと運んだ。

「テリー…あ…の…」

 真っ赤な顔で涙ぐんで見つめる。胸の前で手を結んだ体は小刻みに震えているようだった。

「もう何も言うな…」

 テリーは上から覆い被さるようにして、再び口づけた。

「だって…ホントに…オレでいいのか……?」

「何も言うなって言っただろ」

 優しい口調で返すとユナの言葉を遮るように深く深く口づけした。
舌でユナの口内を確かめる。

「--------っ!」

 滑らかなテリーの舌の感触は頭の中を麻痺させた。
ぎゅっと目を閉じてユナもおずおずと舌を絡ませると、テリーはもっと激しく口内を貪った。

「ふ…」

 小さな声が唾液の絡み合う音と共に漏れる。

「ユナ…」

 キスに満足したのか、テリーは耳元で甘い声で囁いた。

「テリー………っ!」

 服の中にテリーの手が忍び入る。素肌に触れただけで、心臓が飛び上がった。
その先を想像してしまい、体が信じられないぐらい熱くなる。
ユナは体を硬直させたまま、自分を保つことで精一杯だった。
部屋着のボタンに手を掛けると弾みであっさりと外れ、ユナの豊満な乳房があらわになる。

「………っ!」

 テリーは普段のユナからは想像出来ない程大きな胸に目が釘付けた。

「…や…やっぱ……普通と比べてちょっと大きいかな…オレの胸って……」

 テリーは何も返せずゴクリと息を飲み込んだ。
マジマジとユナの肢体を見つめる。日焼けのない真っ白な肌、長くて細い手足に細い体。
大きな胸がますます性欲を駆り立てた。
我慢出来ずテリーはユナの胸に顔を埋めた。滑らかで弾力のある胸にテリーの指が
沈み込む。胸の柔らかさを十分に堪能するとテリーの舌が立ち上がった乳首を捕らえた。

「--------ぁ…っ」

 予想外の気持ちよさに声が漏れる。

「……っ!」

 ユナは声を耐えようと必死だったが、舌で巧みに乳首を弄ばれて気持ちよさに抗えない。

「は…っ…ん…んんっ…」

 熱い舌が乳首を弄んで、長い指は胸を揉みし抱く。
どうにかなりそう…!
目の前で揺れる銀髪はテリーに抱かれていると否応なく実感させられ
異常なほどの気持ちの昂ぶりがユナの体を浸食する。

「やあっ…ひゃ…あっ…ああっ!」

 死んでしまうんじゃないかと思うほど体が熱くて
恥ずかしいほど下着は濡れている。
これ以上テリーに触れられたら……

そう思っている矢先、胸を揉んでいたテリーの手が曲線を伝って下着の中に侵入してきた。

「--------…っ!!」

 敏感な場所にテリーの指が触れただけでも、ユナの体は跳ね上がった。
シーツを汚してしまいそうなほどにあふれている愛液が指に伝わると
テリーは少しだけ驚いた瞳でユナを見つめた。

「……ごめ……」

 なぜか泣きそうな顔で謝るユナに微笑みを返すと、指を再び下着の奥へ滑らせた。

「ぅあ……っ!」

 ソロリソロリと反応を楽しむよう敏感な箇所をなぞっていく。

「やあっ…!ダメッ…そん…な…っ!」

 グッショリと濡れてしまった下着を脱がせると、されるがままのユナの足を開いていく。

「ダッ…ダ…メ…だって……っ!…んん……っ!!」

 テリーの指は感じる場所を全て知っているかのように、滑らかに巧みにユナの体を喜ばせる。
指がゆっくりと中に入って行った。

「…は…んぁ…っ…ぁ…ぅ…っ」

 ユナの中は呼吸するように動き、テリーの指を奥へ奥へ招き入れていく。
もう一本指を増やし、人差し指と中指で熱い中を確かめる。

「んん……あっ…んくっ…!…ひぁっ!!…そ…こ…ダメ…っ」

 指を出し入れしながら、彼女の一番良い場所に行きついた。

「ここがいいのか…?」

「ひゃ…あぁ…ちが……っ」

「…ちがうんならやらないぜ?」

 泣きそうな顔のユナを見て、テリーは意地悪そうに笑った。

「冗談だ」

 ぎゅっと指を押しあて強くそこをまさぐってやる。

「あっ…あぁぁっ!テ…リ…っ!!やだぁ…ダメだって…!!」

「…ユナ…大丈夫だから、イけよ…」

 快感に耐えるユナを見るのも悪くなかったが、テリーもそろそろ限界だった。
ユナの乳首を口に含み、赤子のように吸い付いた。
厭らしい音を立て、指は執拗にユナの良い場所を責める。

「ひゃあっ!!…んっ…んん…テリ……っ…!テリーっ!!
…オレ…オ…レ…も…うっ…!」

 気持ちよさと恥ずかしさが一線を越えた。

「や…っ!ああああっ!!」

 痺れるような快感が全身に突き抜けた。
中はドクンドクンと波打って、熱が増し、更に緩やかになっていく。

「……ユナ……」

 くたり、とベッドで放心しているユナにキスをした。

「まだまだこれからだぜ?」

「………っ!」

 テリーの言葉に我に返り赤面した。

 真っ赤に色づいた秘所は、男のそれを待っているかのようにヒクヒク動いている。
テリーは服を全て脱ぎ捨てると、大きく勃ちあがっている自分のモノをさらけ出した。
ユナの脚を広げさせ、ゆっくりと熱い場所に宛がった。濡れている先端が触れただけで
ビクリとユナは震えた。

「テリ…」

「…入れるぞ…」

「……ぅん………っ!」

 ゆっくりと中に大きなモノが入ってくる。
愛液のせいなのか不思議と痛さは感じない。
中はまだ緊張していたがテリーのモノを根元まで全て飲み込んだ。

「……………っ!」

「…締めるなよ…」

「しめてない…よ…っ」

 そう言いながらもどんどんテリーに食い込んでくる。

「ユナ…」

 覆いかぶさって耳元で名前を呟く。
ユナが反応する度、またぎゅうぎゅうと締め付けは激しくなり
奥からは熱いものが流れ出す。

「テリー…っ」

 本当に自分は今、あのテリーと繋がれているんだろうか

もうすでにテリーは限界だった。
はちきれそうに膨らんだ自分の物は、ユナの中を確かめようともっと奥まで
挿入した所で我慢していた糸が切れた。

「------------っ!」

 ドクンドクンとお互いの中で熱いものが蠢いた。

女を抱いて、初めての失態だった。

「ユナ…悪い…中に…」

 快感に飲まれていたユナは、ゆっくり息を飲み込んで首を振った。

「…うん…大丈夫…オレ…ほら…昔イロイロあったから…だから、大丈夫…なんだ…」

 ”娼婦”と言う単語をはぐらかしながらそう告げる。

「………」

「だから、こんなオレを抱いてくれて、ほんとに嬉しい…から…」

 いじらしい言葉を聞いて、泣きそうなその表情を見て、テリーの物は再び熱を持って
膨らんだ。

「バカ……」

 優しくそう呟くと、テリーは今度はユナを抱きかかえるように挿入する。

「ふ…っ!あっ…あっ…!!」

 正常位とは違った角度で入ってくるそれは、また別の快感だった。
すぐ近くでテリーの存在を感じる。

「うっ…んう…っ!」

「……動くなよ…」

「ぇ…っ」

「オレが…やるから…っ」

 知らずユナはもっと奥まで容れようと体を上下させていたらしい。
意識しているつもりはないが、艶めかしく腰と足を動かした。

「だから…動くなって……」

 再びすぐに出してしまいそうになり、テリーは唇を噛みしめて耐えた。
さすがにこんなに早く出してしまうのは気が引ける。
なによりこの快感をもっと長く味わいたい。

「だって…だって……」

 ユナは荒い息遣いを繰り返す、瞳は潤んで表情は蕩けきっていた。
そのいつものユナとのギャップは更にテリーの欲を刺激する。
腰を両手で掴み何度も何度も奥まで押し込んだ。

「あっ!あんっ!あっ…!あっ…テリ……テリィ…っ!!」

 動かすなと言われたものの、自然と体が動く。

「…く……っ!」

 テリーはもう何も言わず、ユナの動きに合わせて自分の腰を動かした。

「テリ…もぉ……っ」

「……また…イク…か……っ?」

「……っ……!」

 言葉の代わりに、ユナの中がぎゅうっと締まった。

「正直…だ…な…っ」

 粘膜の擦れ合う音が部屋中に響き渡る。

「…く…そ……っ」

 絶頂が思った以上に早く訪れる。

「あっ…あぁっ…っ!テリィっ!ふ…ぅっ…気持ちい……」

「…ああ……オレ…も……っ」

 噛みつくようにテリーはユナにキスをした。
気持ちよさに視界が霞む。ダメだ……もう………

「あ…っ!テリーーっ!!」

 ドクンと中が波打った後、テリーもまた思い切り熱を放出した。
ユナはテリーの胸に寄りかかって、押し寄せるその後の気持ちよさに浸った。

「……ユナ……」

「……ん……」

「…良かったか……?」

「…………っ!」

 恥ずかしそうにユナは頷く、そして

「これ……夢じゃ…ない……?」

 テリーは少し考えて、意地悪そうに笑った。

「どうかな?」

「もしかしたらここは、夢の世界なのかもしれないぜ?」

 だとしたら、自分はもっと素直になっていいのだろう。
欲望に忠実になってもいいのだろう。

「………ユナ……愛してる……」

 驚くユナに、テリーは深くキスをした。






 テリーが…オレの中に入って…

「…………く……!」

 ぎゅっとユナの中が締まると、テリーはあまりの気持ちよさに声を漏らした。

「テリィ…っテ…リ…っ…く…っあ…っんっ…!」

 最高の締まり具合と濡れた粘膜。
テリーはすぐにイってしまいそうで、動かしていた腰を止めた。

「テリ…っん…っんん…っ」

 ユナの瞳は自分を求めているんだと分かっていた。

「ユナ…」

 名前を呼ぶと、ますますユナの瞳は潤んで、これ以上に中の締め付けはキツくなる。

「ユナ…ユナ…」

「う…んっ…う…ん…っ!」

 気持ちよさに体がとろけそうだった。
ユナの秘所は惜しみなく甘い液を出し続ける。
テリーは唇を噛みしめて、更に奥まで突き上げた。

「……ぅあっ!」

「--------っ!」

 たまらない快感に気付かないフリをして、テリーは何度も突き上げる。
古いベッドが音を立ててギシギシ軋んだ。

「テリ…っ…テリーッ…うれ…し…抱いて…くれ…て…っ…オレ…なん…か…っ
……ふっ…!う…んっ…!」

「バカ…!何も…いう、なって…言ってる…だろ…!」

「っ…ゴメ…っはっ…!あっんっん…!」

「………っ!」

 テリーは動きを止めた。
いじらしいユナの言葉だけでイキそうだった。

「う……っ…くっ…」

 額に汗が滲む。絶頂に達している事を認めたくなくて、もっと奥まで突くと

「テリっ…あっ…ああああっ!」

 中が今までで一番強く締まった。

「……ッ…!!」

 ドクンッ!
テリーは抜く暇さえ無く、ユナの中にぶちまけてしまった。
女を抱いて、初めての失態だった。

「…っ----------…!わっ…悪い…中に…」

 快感に飲まれていたユナは、ゆっくり息を飲み込んで首を振った。

「…うん…大丈夫…オレ…ほら…昔イロイロあったから…だから、大丈夫…なんだ…」

 ”娼婦”と言う単語をはぐらかしながらそう告げる。

「だから…さ…だから…気にしないで…好きなようにしてくれたら…うれしい…から」

 いじらしい感情が垣間見えて、絶頂に達したはずの体がまた熱を帯びてくる。
お互い、乱れた着衣を直せない。体の火照りは収まるどころか更に熱さを増してくる。

「………ユナ……」

 テリーが自分の名前を呼ぶと、また実感する。

「テリ……っ」

 逞しい手がうなじに伸びて抱き寄せる。
テリーの体は汗ばんで火照っていて、肌を通して心臓の音が伝わった。
こんなにドキドキしているのは彼の心音なのだろうか、それとも自分の物なのだろうか?

じわりとユナの目に涙が浮かんだ。

「テリー……」

 見上げて、アメジストの瞳と目が合う。

「……痛かったか……?」

 泣いているユナを見て、そう思ったのだろう。ユナは首を横に振って

「初めて思ったから……」

「……?」

「オレ、女で良かったって…」

 テリーは驚いた顔をした後、ふっと唇を緩ませた。

「そういえば出会った頃は男になりたいって喚いてたからな」




「…好きなようにして、いいのか…?」

 その声に一瞬ハっとするが恥ずかしそうに笑顔を返す。

「うん、もちろん」

 テリーは少しだけ考えて、じゃあ、とユナの体をうつぶせにさせた。

「……っ!ちょっと、まっ!背中は…!」

 ユナは慌てて体を戻そうとするが、強い力から阻まれる。

「…ダッ…ダメだ…背中は…」

 珍しくテリーに抵抗するが、圧倒的な力の差には抗えない。
背中に視線を感じる。先ほど鏡で見た自分の背中が瞬時に思い出された。

大きな刀傷、無数に走る仕置きの痕、叫び声を聞く為だけに付けられた火傷の痕。
驚くテリーの顔が容易に想像出来て、激しく胸がざわめいた。

「…さっきも言ったが、これぐらいで嫌うわけないだろ-------」

 ユナの思いを見透かしたように、小さく呟く。

「こんなに簡単にお前への想いを切れたら、ここまで苦労しちゃいない…」

「----------っ」

 ユナはやっと少しだけ顔をあげてくれた。
テリーは一番大きな傷跡に手を伸ばす。
よほど深く斬られたのだろう、治った後でも皮膚が変色している。
辛い思いが色濃く残る背中はテリーの胸を締め付けた。
もう二度と、ユナにはこんな思いをして欲しくない。こんな思いはさせない。
ずっと、一生守ってやりたい。
ユナへの強い想いが体を突き動かす。
細い腰に手を当てて、滑らかなお尻を持ち上げると再びユナの中へと挿入した。
精液で濡れたテリーのモノはゆるゆるともっと奥まで入っていく。

「ひゃっ…あっ…うっ…テリ…!」

 テリーのモノが中に当たる。
テリーが奥へ突く度、ユナの大きな胸が波打った。

「ふ…うっあっ!うっん…!」

 ベッドの軋む音が激しさを増していく。
感情の昂ぶったテリーは何の抵抗もなく自然な気持ちを口にしていた。

「……愛して…る……ユ…ナッ…!」

「…あっあっ…うんっ…テリー…っ!オレ…もっ…!」

 体と心が絶頂に達する。
今までに味わったことのない幸福感に満たされながら、二人は初めての甘い夜に堕ちていった。



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