● 忘れな草 ●
豪華な部屋だった。 大きなベッドが二つ、大きなテーブルが一つ。ランプがベッドの傍らに二つ。 色彩豊かな絨毯。 何よりその部屋の広さや壁や天井の飾りがより豪華さを引き立てていた。 落ち着かない様子でベッドに座る。 隣のベッドにはもう既にテリーが仰向けで寝ていた。 相変わらず目を伏せて、何を考えているのか分からない。ホントに眠っているのか・・・。 ユナが声をかけようとした時、部屋の扉が開いた。 「どう?この部屋は。気に入って貰えたかしら?」 「うん、ありがとう。お風呂もすっごい気持ちよかったよ」 ベッドから立ち上がって入ってきたイミルの側に行くと 急に手を握られ、その手の上に何かを乗せられた。 「ハイ、これ」 「何だこれ・・・?」 手の上に乗せられた物体。 何かの薬草のようだ。 「もーっ、沢山の貢ぎ物の中からコレ見つけるの大変だったんだからぁっ!」 「・・・・・・?」 不審にその草をじっと見ている。 「それはね、勿忘草っていって自分が忘れたいって思ってることを忘れさせてくれる草よ」 「ワスレナグサ・・・?へぇ・・・」 「へぇじゃないわよ、あんたの為に探してきたのよ!?」 はっと顔を上げてイミルを見る。 「オレの?」 自分を指で差すと向こうは腕組みをしたまま頷いた。 「あのさ、今日、アンタの過去色々見ちゃったじゃない?それで、アンタも色々辛いこと経験してるんだなって 私も何かチカラになれたらって思って・・・思い出したのがコレよ!」 視線を再び手の上に戻した。 「その草を煎じて飲むと、自分が凄く辛く思ってることや忘れたいって思っている嫌な記憶を 消すチカラがあるのよ。これ、すっごく貴重品なのよ。感謝しなさい。 それを飲めば・・・きっと昔のことも綺麗サッパリ忘れられるわ」 ユナは俯いて黙った後。 「ゴメン・・・」 「・・・・・・?」 「イミルの心遣いは凄く嬉しいけど・・・これは使えないよ」 「・・・・・・!」 弾かれたようにイミルはユナの肩を持って叫ぶ。 今まで無関心にベッドに仰向けになっていたテリーも体を起こしてユナを見た。 「・・・・・・な、何言ってるのよ!昔の事も、ギンドロの事も、全部忘れられるのよ!」 やっと顔を上げて喋り出す。 「オレさ、昔記憶喪失だったんだ」 「記憶喪失・・・?」 チカラの抜けたイミルの手を掴んで下ろすと くるっと後を向いた。 「子供の頃の事とか、今までの事とか全然覚えて無くて・・・自分が一体どんな人間なのか どんな経験をしたのか何も分からなくて・・・自分って存在が凄くあやふやだったんだ。 十数年も生きているはずなのに・・・2、3年しか生きていないような・・・そんな感じだった」 再び体をこちらに向ける。 「けどさ、記憶思い出して、すっごく辛かったけど思い出せて良かったって思ったんだ。 あんまりイイ記憶じゃなかったけど自分がいままで通った道だし・・・今の自分がいるのは 記憶あっての事だと思ってるしさ。まぁ・・・最近思った事だけど。」 自分という存在は記憶の糸をたぐり寄せて形成されている物だと。 昔、神殿に来た徳の高い僧侶が説いていたのを思い出した。 その記憶の糸は一本でも足りないと、正しい自分を構成できないと・・・。 イミルはため息をついて 「あーあっ、せっかくあんたのために探してきたのになぁ」 「ゴメン、イミル・・・」 申し訳なさそうに頭を下げるユナに首を横に振る。 「いいのよ、アタシもお節介だったし」 ユナもブンブン首を横に振った。イミルの心遣いは本当に嬉しかったから。 お互いに考えている事を悟るとふっと笑い合う。 「アンタとテリーの事根ほり葉ほり聞こうと思ったけど・・・何だか今日は色々疲れちゃたからもう寝るわ」 背を向けてドアノブに手を掛ける。 「明日レイドックに行くんでしょ?色々要りような物用意しておくから」 「うん、何から何まで有難う」 テリーもベッドで片膝をついたまま頷く。 小さく手を振るとパタンとドアを閉めた。 「あっ、それと」 言葉と共に再びドアが開けられる。 「神殿内での性行為は厳禁だからね〜」 その言葉に真っ赤になって 「・・・・・・!!わ、分かってるよっ!!」 向こうはフフフと笑って手を振った。 再びドアが閉められると、真っ赤になった頬を隠すように顔を俯かせる。 「もう・・・相変わらずだよなあいつ・・・なぁ?」 ベッドの方に目を向けるとじっとこっちをみていた。 先ほどの言葉を思い出してまた赤面して顔を背けた。 「ユナ」 「な、何だ・・・?」 顔を背けたまま答える。 「ワスレナグサ・・・」 「うん」 「使わなくて良かったのか?」 「・・・うん」 やっと少しだけ彼の方を向いた。 向こうは勿忘草を使わない理由が分からないのか不審な顔でいる。 理由を尋ねる前にユナから話し出した。 「テリーと初めて会った時、オレ記憶無かったよな?自分が何者なのか分からなくなって 自分の生き方や自分に全然自身が持てなくて・・・昔の自分を想像すればするほど怖かったけど・・・」 歩きながら独り言のように呟く。 一息着いた後ベッドに座って少し考えた後 「記憶思い出してさ、昔よりずっと自分の生き方に満足したし、自信だって持てるようになった。 そりゃ記憶思い出してすぐの時は思い出さなきゃ良かった、忘れたいって思ってたけど 最近考えるようになったんだ、あのギンドロの事や復讐に燃えてた時期があったから今の自分がいるんだって」 自分に言い聞かせるように言う。 「それに・・・」 顔を上げて同じようにベッドに座っているテリーを見た。 「今の自分、結構好きだし」 白い歯を見せる。 「強いな・・・」 「え?」 「いや、何でもない」 顔を伏せてそのまま背中を向けベッドに横になる。 「お前なりに色々考えていたのかと思ってな」 「うーん・・・使おうかどうか迷ったんだけど・・・記憶がなくなるなんて 結構怖いし・・・そんな理由もあるかな」 「なぁ、オレもさ聞いてもいいかな?」 「・・・何だ?」 「オレの心の中どうなってたんだ?」 「またその話か」 「だって、何も聞いてないし・・・やっぱり気になるじゃないか」 一時何も答えなかったテリーだが息をついたと同時に話し出す。 「青い空と草原がずっと広がっていて、草原を左右に分けているような一本の道がずっと 続いていた。単純な所だったな」 良い部分だけを口に出した。 小さい頃やギンドロの頃の記憶はユナにも、オレにも辛すぎる。 捨てられた記憶と売られた記憶、弄ばれた記憶があんな惨い幻影を見せていたんだろう。 「な、なんだよそれー!」 「本当の事だ?少しは満足したか?」 寝返りを打ってユナの方に体を向ける。 「うん・・・まぁ・・・」 まだ良く納得出来ていないらしい。 「じゃあさ、オレの心の中にテリーは居た?」 「・・・・・・・・・」 「もしかして居なかったのか?」 不安げに問うユナに首を振って 「いや、居た」 「どんな風に?」 言葉の意味を考えてしまう。慌ててユナが付け足した。 「だって、テリーの場合はミレーユさんの大きな肖像画が飾ってあったりしたんだよ。 だからオレの場合は、テリーはどんなカタチで出てきたのかなって・・・ やっぱり自分の心の中の事でも凄く気になるし」 ・・・・・・・・・。 テリーは何と彼女に言ったら良いのか分からなかった。 『ユナは、テリーを心のより所にしてるって事よ。だから、いつも辛い場面の時はテリーが出てきて ユナをずっと助け続けたのよ』 イミルの言葉が思い出される。 目の前のユナを見て、愛しさが込み上げてきて、再び寝返りを打った。 「・・・・・・居たんだから別に良いじゃないか。くだらない事言ってないでさっさと寝ろ。 明日中にレイドックに着きたいんだから明日は早いぞ」 この事を言ってしまうと自分に歯止めが利かなくなりそうで、はぐらかす。 こいつは本当にオレの事を想ってくれているんだな・・・。 「もう・・・都合が悪くなるとすぐこれだ・・・。別にオレの事なんだから話してくれたって いいじゃないか」 「またいつか話してやる。だから、今日はもう寝ろ」 「ほっほんと!約束だぞ!」 嬉しそうに微笑むユナを感じて、心地良い気分になった。 ユナも頭から毛布をかぶる。 一人だけの温もりに寂しさを感じながらユナは目を閉じた。 「・・・・・・・・・」 しばらく経って毛布をばさっと広げ上半身を起こした。 となりで背を向けているテリーに声をかける。 「テリー・・・?もう眠った?」 返事がない。 もう眠ったのかな・・・。 仕方なく再び毛布をかぶった。 テリーの心の中に、オレは居ると思う? 居るとしたらどんなカタチで居ると思う? 心の中で呟きながら布団の中で膝を抱える。 やっぱり・・・テリーの心の中も見てみたかったな・・・。 「オハヨウッ!ユナにテリー!!これからの旅に要りそうな 薬草とか乾物とか衣類とか色々用意してあげたわよ」 朝からテンションの高いイミルの声に、寝ぼけ眼の脳がやっと起き始めた。 「ありがとうイミル、助かるよ」 「すまないな」 「あ、それと・・・二人の鞄の中に昨日の勿忘草も入ってるから?」 勿忘草・・・?昨日の記憶を辿った。 「え?何で?」 「もし気が変わったりしたら使えばいいでしょ。それに売っても良いお金になるんだし」 「何故オレまで貰うんだ」 「うーん折角貢ぎ物の中から探したんだもん。それに売ったらお金になるんだから・・・ 人の好意は素直に受け取ってよね。忘れたい事が出来たらそれ使ってみればいいじゃない」 イミルの心遣いが嬉しかったのか笑顔で返す。 テリーも一応頷いた。 「レイドックまで行くのよね・・・歩いて行ったら夜になっちゃうわね・・・」 何かを思い出したかのようにポンと手を叩く。 「そうだっ!ねぇ!歩かなくて言い様にしてあげようか?」 苦い記憶が頭を過ぎった。もう4年前にもなるが忘れられない苦い記憶。 「転送呪文は勘弁してくれよな」 図星だったのか無言になってしまった後 「もうっ!何よ人の好意を!」 「ゴメンゴメン。だって何処に飛ばされるか分からないだろ?」 「ちゃんと研究したわよ!今では半分の確率で目的地に とばせるようになったんだからね!」 自慢げに言うイミルだが、半分の確率は自慢になるのかどうか分からなかった。 苦笑いを返す。 「一日やそこらで着くんだ。お前のチカラを借りる必要もない」 冷静な意見を出す。 うーん・・・やっぱりテリー一年くらい会わない間に・・・大人になったって感じるな・・・。 「うーんそれもそーねぇ。私のチカラを煩わせる必要もないわね」 鞄を持って二人に渡す。 「色々聞きそびれちゃった事もあるけど・・・まぁ、またここに来るんでしょ?」 「ああ、絶対来るよ」 「そう言って何年後になるのやら・・・。そうね・・・結婚式には呼びなさいよね! 「・・・・・・・・・っ!」 真っ赤になって止まってしまった。隣のテリーを見ると相変わらず平然としている。 「良いわねっ!」 念を押すイミルに仕方なく一応返す。 「わ、分かったよ。ちゃんと呼ぶから」 「よろしい」 満足げに頷いた後、やっと鞄を二人に預けた。 「それじゃ、気を付けて行って来なさい」 「うん、それじゃまたなっ」 もう歩いて行っているテリーを追いかけるように少し早歩きで歩き出す。 イミルは、ユナたちが見えなくなるまで神殿の門でずっと立ちつくしていた。 「勿忘草・・・」 誰にともなく呟く。 「私の予感が・・・当たらなきゃいいけど・・・」 両手を合わせ指を絡ませる。 天を仰いでイミルは祈った。二人の旅路とこれからの未来を。 神殿から出て、街を出て草原をしばらく歩く。 ユナは自分の言ったことに何だか赤面してしまっていた。 『結婚式には呼びなさいよね!』 分かったなんて言っちゃったけど・・・結婚なんてそんな事・・・。 ユナの事を気にも留めていないように自分の歩調で歩くテリーを見た。 テリーは結婚なんて事、絶対考えてないだろうな・・・。 そりゃ、結婚出来たら・・・凄く嬉しいけど・・・まさか・・・・・・。 「おい」 急に立ち止まって振り向くテリーに、自分の心の内を見られたようで ちょっとドキリとしてしまった。 「夜までにレイドックに着かないと閉め出されて野宿になる。 そんな歩調じゃ明日になっても着かないぞ。早く来い」 「う、うん」 ユナの返事も待たずに再び歩き出した。 結婚なんて・・・考えてるはずもないよな・・・・・・。 寂しくなって、もう考えまいと頭を振るとテリーと同じように無言で歩いた。 何とか日が暮れる前にレイドックに着いた。 レイドックの兵士が門を閉めようとした所で慌てて駆けつけたのだ。 「ギリギリセーフだったね」 「ああ、もう少し遅かったら門を閉められて危うく野宿になる所だったな」 宿で荷物の整理をしながら話す。 「野宿か・・・オレはそれでも良かったんだけどな」 「お前はいいかもしれないがオレは面倒くさい。金はかかるが宿の方が良い」 「テリーらしいね」 フフっと笑ってしまう。 「明日の朝、城に行くんだよな。旅人でも、入れてくれるかな・・・」 「レイドックは旅人でも商人でも気にせずに城に入れてくれる事で有名だ。 それにウィルの昔の仲間だし、レイドック王とも会った事があるんだ。大丈夫だろ」 テリーの言葉にコクリと頷いて質素な部屋着に着替えて質素なベッドに座った。 テリーもユナと同じ動作をし終わった所で、一息ついて呟く。 「・・・城に行って・・・バーバラとウィルに会った後・・・」 「え?」 「それから、どうするんだ?城に滞在するのか?」 「うーん・・・どうだろう。まだ分かんないじゃないか」 「・・・・・・」 不満げな顔でじっと見てくるテリー。 「どうしたんだよ?」 「城に行って、もし滞在する事になれば二人きりになる時間が減るじゃないか」 「・・・・・・・・・え?」 「バーバラとお前・・・話しっぱなしになりそうだし・・・面白くない」 「・・・・・・っ!」 真っ赤な顔で吐き捨てる彼に、苦しい故の愛しさが襲った。 「悪かった。オレのワガママだったな。聞かなかった事にしてくれ」 「オ・・・オレだって・・・オレだってテリーが好き!」 彼の行動に口から言葉があふれ出る。 「・・・・・・何を言ってるんだ。それとこれとは今は関係ない・・・」 胸が熱く打ち出しているのを悟られないように、冷静に返した。 「何か、ずるいよテリーだけ。オレだって気持ち伝えたいのに・・・」 「何が・・・?」 ぎゅっと抱き締めてくるユナに彼女の心中を悟ると、笑って答えてくれた。 「ああ、悪かったな」 テリーも、片手を背に回す。 「昼のテリーと夜のテリー・・・全然違うよな・・・」 「・・・・・・?」 「夜・・・凄く優しくなるよな」 「それはお前だって同じだろ」 間をあけず即答した。 「夜のお前と昼のお前、全然違うぞ」 「な、何だよ。どういう意味だよ」 何となく分かっているのに尋ねてしまう。 目と目が合う。 心臓の音がお互い同じように激しく打っていた。 お互いに考えていることが同じだと知ると、目を伏せた。 熱い包容をした後、テリーはベッドにユナを押し倒した。 宿の質素な部屋着は帯を取るだけですぐにバラバラになる。 部屋着の時はサラシを巻かないのか、すぐに肌が露わになった。 一日感じてないだけなのに・・・凄く久し振りみたいだ・・・。 凄くドキドキする・・・。 心臓の熱い鼓動を感じながら彼に身を任せた。 テリーは何を思ったかユナの肩を掴んでうつ伏せにさせる。 「・・・・・・?どうしたん・・・?」 背中の傷を、指でなぞる。 大きな刀傷を首元から腰まで指でなぞった後、後ろから首筋にキスをした。 いつもと違う彼のやり方に戸惑う。 向こうは何も言わずユナの背中を愛撫し続けた。 こうやってキスされていると、昔、初めてテリーに抱かれた時の事を思い出す。 その時オレは、背中の傷を見られたくなくてずっと庇ってた・・・けど テリーはこんなの気にしないって言ってくれて・・・・・・。 愛しい想いが込み上げる。唇を感じるだけで溢れる。 再びベッドに仰向けにすると、ユナはいつもの男っぽい雰囲気は微塵もなく女になってた。 その紅潮した頬も、濡れた瞳も、つんと立ったカタチの良い胸も、しなる体も・・・・・・。 その瞳にキスをして唇にキスしようとして、体を彼女から離した。 「オレに抱かれるの・・・辛くないか・・・?」 「・・・・・・・・・!?」 驚いているユナに顔を背けて 「ホントは我慢してるんじゃないのか?」 「ど、どうしてそんな事言い出すんだよ!」 「ギンドロの時の記憶を見て、男に弄ばれる記憶を見てそう思った。 たとえ忘れられない記憶でも、オレに抱かれるたびにその事を思い出すんじゃないのか?」 ブンブンと首を振る。 「思い出さない!思い出すわけないよ!」 だって 「だってテリーはオレの事ちゃんと考えて抱いてくれるし・・・その・・・優しくしてくれるじゃないか・・・」 「それに・・・決定的に違うのは・・・オレがテリーの事愛してるって事だし・・・」 テリーだってオレの事想ってくれてる事・・・ 「だから、だからそんな事言わないでくれよ・・・」 「・・・・・・ユナ・・・」 そっと髪に触れる。その手を頬に触れさせて、唇に触れさせた。 少し潤んでいるようなユナの瞳を見て、愛しい想いを確信した。 オレの心の中にはミレーユ姉さん以外にもっと大きな光が有ることを。 その光が真っ黒なオレの心の中を明るく照らしていることを・・・。 ランプのオレンジの光に照らされた体を目で辿る。 ユナの記憶で付けられた傷痕も、アザも、そのまま残っている。 出来れば・・・ギンドロでの記憶を忘れさせてやりたいと思っていた・・・ でも、ユナの過去を見て心にあんな傷跡を負わせた記憶は 決して忘れる事は出来なくて・・・・・・。 それなら、忘れさせる事が出来ないなら・・・ お前の辛い記憶もオレも一緒にずっと覚えているから。 辛いのはお前だけにさせないから それから 壊れるくらいにお互いを求め合った。 愛しい想いはどんどんあふれて心の器を満たす。 器からこぼれ落ちた想いは体中を蝕んでいく。 その想いを受け止めるために二人は何度も体を重ねた。 瞳に映っている愛しい恋人の存在を感じながら体を求め合う事が 彼らにとって一番の幸せだった。 |