ヒュン。風が体をまとって、ふっと宙に浮いた。
勢いよく吹いていた風がさらさらと前髪を撫でるくらいにおさまって
そっと目を開くと、目の前には違う景色が広がっていた。
風はゆっくりと散って、その風で巻き上げられた花びらがひらひらと目の前を舞っている。
風を切る痛みも、着地した時の衝撃も、魔力を放出した後の体のだるさもない。
「なななんて良いモンなんだキメラの翼って!」
胸の前で握り拳を作って感嘆した声を上げる。
「なんだ?初めてか、キメラの翼は」
「うん!こんなモンあるなんて全然しらなかったよ!これなら世界中旅して回るのだって全然
苦にならないじゃないか!発明した人って、すっごいな!」
「まぁな。でも最近出来たばかりでまだ世間には浸透してないし、おかげで値もかなり張るがな」
「・・・そっか・・・やっぱ高いのか・・・」
ボソボソ呟くユナに、唇を緩ませた後テリーはようやく周りを見回した。
「・・・・・・・・・?」
見覚えの無い景色だった。
色とりどりの花が咲き乱れ、見渡せないほどの大きな花畑を作っている。
自慢じゃないがこんな場所は訪れた事も無ければ訪れる気も無い。
一体ここは何処だ?
隣のユナも、怪訝な顔で辺りを見回している。
「おかしいな・・・トルッカを意識したハズなんだけどな・・・」
呟いて、再び辺りを探索しだすと、あっ!と声を上げた。
声を上げたその先には、見覚えの有る古井戸。
テリーも、もう一度辺りを見回してようやくこの場所が何処なのか見当が付いた。
「ここは・・・トルッカ北の夢見の井戸か?」
「そうだ!ここ、夢見の井戸だよ」
名前を忘れていたのか言葉を聞いた途端スッキリした顔で相槌を打つ。
「そうそうこの井戸見覚え有るし、この暖い気候も、遠くの丘陵とかも覚えあるよな・・・」
テリーも、ぐるりと体ごと辺りを見回して呟く。
「変わったな、ここも・・・」
「・・・うん」
夢見の井戸。
薄暗い林に囲まれたそこは、枯れた井戸と枯れた土地しか無かったのに。
「そう言えば、んな事も有ったなぁ・・・」
「・・・?どうしたんだ?」
懐かしそうに呟くユナに何となく気付きながらも尋ねた。
「ほら、昔さ、エリザが魔物に誘拐されてここまで呼び出された事があったろ?
その時、テリーがオレの事庇ってくれて・・・」
視線を彷徨わせながら恥ずかしそうに頭を掻く。
「・・・ずっと聞きたかったんだけど、あの時なんで庇ってくれたんだ?」
「・・・・・・」
テリーは無言のまま数歩歩いて、ユナに背を向けた。
「・・・理由は分からない。
体が勝手に動いていた。お前を助けようと思ったわけじゃなかったハズなのに
気付いたら炎の前に飛び出していて・・・・・・」
古井戸の方へ歩きながらそれが案外遠くに有る事を知ると立ち止まって振り向いた。
「多分、自分では気付いてなかったが、その時はもうお前の事を好きだったんだろうな」
「・・・えぇっ!う、嘘!?」
自分で聞いておきながら、思いがけない彼の言葉にすっとんきょうな声を上げてしまう。
「・・・・・・嘘」
「・・・・・・っ!?」
目が点になってしまっている彼女を見て、滅多に見せない悪戯っぽい笑顔。
「なっ何だよ、嘘って!もぉーっ!」
「ふっ、くく・・・はは」
じゃれて掴みかかったユナだったが、勢いのまま二人してその場に倒れ込んでしまった。
「うわっ!」
倒れた勢いでまた花びらが舞う。
「あはははっ」
「もうっ何笑ってんだよーっ」
珍しく声を上げて笑う彼にユナも笑顔で言い返す。
「はは、悪い」
ようやく笑うのをやめ、謝る。だが表情は先ほどと全く変わってない。
「もぉ、ふっ、ふふ、あはは」
そんなテリーに思わず笑顔になる。
花畑に倒れ込んだまま二人してひとしきり笑った後、テリーが呟いた。
「・・・・・・・・・・・・嘘じゃない・・・」
「えっ・・・?」
仰向けに寝転がり、青空からユナに目線を移すと今度はしっかりと呟いた。
「嘘じゃないさ・・・」
「テリー・・・・・・」
降り注ぐ日差しの中、花の香りに囲まれて、二人は今有る幸せを噛み締めていた。
相変わらずトルッカは暑い。
夢見の井戸からトルッカへと足を運ばせながらそんな事を考える。
湿った空気が不快指数を上げ、汗で下着がまとわりついて気持ちが悪い。
トルッカの町並みに足を踏み入れる。
記憶を辿ってエリザの家に足を運ぶと
「あれ?エリザの家、何だか変わってるな。前以上に大きくなってる気がするけど」
以前とは家の外観が変わっている気がした。
庭はこんなに広くなかった気がするし、家ももう一回り小さかった気がする。
「あれから大分経ってるからな。改装でもしたんじゃないか?」
「そうなのかな・・・家が広すぎるとか言ってた気がするんだけど・・・ルドマさん」
豪華な門構えにたじろぎながらユナが呟く。
「・・・オレたちの事覚えてくれてるかな・・・」
「オレたちが覚えてるんだ。向こうだって覚えてるさ」
「そっか・・・うん、そうだよね」
テリーの言葉に自信を持ち直して門の呼び鈴をならそうとすると
その前に門の奥、大きな扉が開いた。
「・・・あら・・・?お客さ・・・」
出てきた人物はユナたちを見た途端言葉が止まってしまっていた。
何の準備もしていなかった再会にどちらも時が止まる。
ようやく事を理解すると、出迎えた女性の瞳がパァっと輝いた。
小走りで門の前に駆け寄り、鍵を開けるともう一度尋ね人の顔を良く見る。
「うっわぁーっ!久しぶりねーー!!あなた達、ユナにテリーでしょ!!?
んっもう!今まで何してたのよ!連絡のひとつも寄越さないで!!」
病気がちだった昔とは比べ物にならないほど勢いよく捲し立てるエリザ。
豊かな金髪はバーバラのように頭の高い所で結い上げられ、
肌も前ほどに青白くなく、頬には赤みが差していて健康そのものだった。
「さっ!早く!入って!うわぁ、話したい事沢山有るのよっ!」
満面の笑顔でユナの手を取り、懐かしい部屋の中に案内してくれた。
「急に尋ねてきてくれたかと思ったら・・・結婚ですって!?
もう!驚かせるのも程ほどにして頂戴よ!ふふっ、でもおめでとう、本当に良かったわねユナ!
何時の間にそーんな関係になっちゃったのかしら?後でたーっぷり事の経緯を聞かせて貰うわよw
でも、ま、それでこそ、私がテリーから身を引いた甲斐があるってものかしらね」
人数分の紅茶をトレイに用意して、それを光沢の有る大きなテーブルに置く。
もう何度見たのか分からない程だったがもう一度二人の顔を見回して、良い意味でのため息をついた。
幸せそうに笑うユナの額に軽くデコピンしてソファに座る。
「ビックリしたのはコッチだよ!だって、まさかヒックスと一緒になってるなんてさ!なぁ?
結婚式、見てみたかったなぁ・・・」
テリーに同意を求めた後、エリザの花嫁姿を想像してしまった。
ヒックスとエリザ・・・考えもしない組み合わせだったけど、お似合いじゃないか。
「私だって、ユナに来て欲しかったわよ?でも何処に居るのか分からないし、連絡の付きようもないし・・・」
残念そうに首を振って、持ってきたティーカップに手を付ける。
ユナも申し訳なさそうに頭を掻いて、同じようにカップに手をかけた。
女たち二人のお喋りに、テリーは相変わらず我感せず。
エリザがテリーに声を掛けようとして、先にユナから問いかけられた。
「ねぇ、そのヒックスは?」
「彼ならこの時間いつも街の外の泉で水浴びしてるわよ。
・・・それにしても遅いわね・・・。そうだ、ユナちょっと見に行ってくれない?」
「うん、良いよ」
快く返事を返して紅茶を啜った後、早速立ち上がった。
「場所は東門を出てすぐの森の中の泉よ。そんなに大きくないから歩けばすぐに見つかるわ」
「分かった、じゃ、行ってくるね」
「待て、オレも行こう」
女二人の会話を聞いていたテリーがようやく口を開いた。
ユナは不思議そうに振り返り
「オレ一人で大丈夫だよ。テリーは休んでて」
「・・・・・・いや、だが・・・お前は・・・」
言いかけて口ごもる。
「じゃあオレが代わりに行く。お前の方が休んでいろ」
そう言ってテリーも立ち上がった。
「やけに気を遣ってるわね。そんなにユナの事が心配なの?ヒックスは私の旦那なのに」
「そ、そんなワケじゃ・・・」
自分でも気付かなかった事を指摘されて珍しく言葉が濁った。
「じゃあ、良いじゃない。ユナ、お願いね」
「うんっ。それじゃっテリー、すぐ戻ってくるね」
「あ・・・ああ・・・」
ヒックスの妻エリザにそう言われてしまった手前ユナを引き留める事も出来ず
渋々ユナの後ろ姿を見送った。
オレは、お前の体の事を心配していたんだが・・・
「・・・・・・・・・」
ユナが部屋から出て行った所で、ドスンとソファに座る。
エリザに指摘されて、昔を思い出してしまった。
ヒックスか・・・そう言えばそんな事も有ったな・・・。
ユナはエリザに言われた通り、東門を抜けすぐ目の前に見える森の中を歩いた。
人が通る為なのか切り開かれた道を進むと、湖もすぐに見つかった。
しかし湖に人影は無い。
湖の畔を歩いて、懐かしい人影を探す・・・と程なく目的の姿を見つけることが出来た。
向こうを向いて、ちょうど服を着替え終えた所だった。
褐色の肌に漆黒の髪。違っている事と言えば長かった髪の毛が
スッキリと短く切りそろえられている事くらいだ。
驚かせようと忍び足で歩く前に、気配に気付いたのか向こうが先にこっちを振り向いた。
「・・・・・・っ!!」
「よっ、久しぶり!」
忍び足で近寄る間もなく、あいてはしっかりと驚いてくれた。
「それにしても驚いたぜ、急に尋ねてくるなんてよ」
「それ、エリザにも言われたよ。でも、こっちだってビックリしたよ、まさか二人が結婚してるなんてさ」
積もる話に花が咲いてしまって、湖の畔で話し込んでしまった。
数年ぶりに見るヒックスは以前より背も高くなって、顔立ちも精悍になっていた。
「ハハ、まぁ、色々あってな」
恥ずかしそうに頭を掻く。
「そっちこそ、まだテリーと一緒なんだろ?」
「うん」
今度はユナの方が恥ずかしそうに頭を掻いた。
「・・・そっか、良かったな、ユナ」
どことなく寂しそうにそう呟いて、視線を泉の先に戻そうとすると
彼女の耳元で風に揺られているスライムピアスに気付いた。
「・・・!お前・・・まだオレがプレゼントしたスライムピアス付けてるのか!?」
長い間風に晒されて色褪せてしまったスライムピアス。
振り向いたと同時に、また揺れた。
「うん、勿論!」
「・・・大切にしてくれるのは嬉しいけどよ・・・その、テリーがいい気持ちしないんじゃ・・・」
別の男から貰ったプレゼントをずっと大事にしているなんて、もし自分があいつの立場なら
良い気持ちはしない。
「テリーからも同じ物貰ったんだ。だから、片方ずつ付けてるよ」
言葉の意味を解せる程恋愛に長けていないユナは笑顔でそう返した。
「テリーからも貰ったのか!?」
それなら尚更腹が立つな、オレなら・・・。
何も分かっていないユナに仕方なさそうに笑う。
「ユナ、オレがお前にプレゼントしたスライムピアス、ちょっと貸してみろ」
「・・・・・・え?」
首を傾げながらも右耳の褪せたピアスを取り外し
鞄から少し褪せたスライムピアスを取り出した。
ヒックスはそれを受け取ると、立ち上がって何を思ったか泉に放り投げた。
音を立てて小さな水柱が二つ出来る。
「なっ!なっ!何するんだよ!」
その行動に呆気に取られていたユナがようやく我に返った。
「・・・これで良い」
「何が・・・っ!」
ユナも慌てて立ち上がり真意を聞き返す。
「お前は、テリーだけを想って生きていけば良い」
「・・・・・・・・・っ・・・」
ヒックスは鞄を指さし、次にピアスの着いてない右耳を指さした。
ユナはヒックスの心遣いをようやく理解して
鞄の中から真新しいスライムピアスを取り出し右耳に付けた。
「・・・有り難う、ヒックス」
薄い青と真っ青なスライムピアスのバランスは不格好だったが、
どちらのスライムも幸せそうに見えた。
「あっ、テリー!待っててくれたのか?」
二人でルドマ邸へ戻ると、あの大きな門構えの前にテリーが立っていた。
「ああ、遅かったな」
ユナの姿を見つけて顔が綻ぶが、隣に居る背の高い男も視界に入ってしまい
すぐ表情が曇った。
「ヨッ!久しぶりだな」
テリーの胸中を知ってか知らずか笑顔で手を挙げる。
テリーは挨拶のつもりなのか本当に少しだけ会釈して、何も答えずに家の中に入っていった。
「・・・相変わらず愛想ねぇなアイツ・・・」
「いやぁ、それにしてもほんっと久しぶりだな〜、なんかこうやって
4人集まると、昔の修羅場を思い出すよな」
「もうっ、ヒックスってば!」
ヒックスの分の飲み物を持ってきたトレイで軽くヒックスの頭を小突いた。
「まぁまぁ、ま、今はこうやって4人幸せになれたんだから良いじゃないか」
エリザに頭を下げると向かいに座るユナとテリーを見回して、うんうんと感慨深げに頷いた。
「結婚式にも、誘ってくれて有り難うな。それにしてもユナの花嫁姿・・・
綺麗だろうなぁ・・・ああ、勿論、エリザの花嫁姿もスッゲェ綺麗だったんだぜ!
くぅっ、お前たちにも見せたかったよ!」
言葉の途中で、エリザの視線が痛かったのかしっかりとフォローを入れる。
「相変わらず良く喋る奴だ・・・」
ヒックスはテリーの痛い突っ込みに聞こえないふりをしてユナに問いかけた。
「で、日取りと場所は一ヶ月後の新月、ガンディーノ教会・・・で良いんだな?」
「うんっ!」
「ガンディーノねぇ、私、実は行くの初めてだったりするのよ。お父様とヒックスと3人で
出かけるなんて、ふふっ結婚式も合わせて楽しみね〜!」
「ユナ、お前の花嫁姿、楽しみにしてるからな!あ・・・ついでに、お前も頑張れよ」
嫌味ともとれそうなヒックスの言葉にテリーは最後まで何も言わなかった。
自宅への宿泊を勧めるエリザの誘いを丁重に断った後
二人は昔の懐かしい宿屋へと足を運ばせた。
宿の主人は二人の事を覚えてくれていて、ひとしきり懐かしんでくれた後
厚意なのだろう、勝手に二人部屋の方を用意してくれた。
「宿のおじさんがこの部屋取ってくれたの分かったぜ。ここ、前にオレたちが
泊まった部屋だったんだな」
夕食と入浴を済ませてしまったユナが、湯上がりで赤い顔のまま
ベッドに横たわった。
天井の染みや汚れは昔と同じだった、だが。
体ごと視線を横に向けた。
部屋を仕切っていた壁はもう無くなって、仕切られていた隣部屋の様子が見える。
「仕切りが無くなってて全然気付かなかったぜ」
「狭かったからな。二部屋繋げてちょうど良くなったんじゃないか?」
ユナはベッドに寝転がったまま頷いた。
「・・・何か、昔のオレとテリーみたい。あのころはお互いの心に壁があって
でも、今は壁なんて無くて、この部屋みたいに繋がって・・・」
心の声が思わず声に出る。我ながら恥ずかしい事を言ってしまったと思い口をつぐむが
「ああ・・・」
相手は意外にも優しく微笑み返してくれた。
「だよな?やっぱ・・・テリーもそう、思うよな」
その微笑みに嬉しくなって、夢見心地で答える。
シーツの肌触りの良さと、精神的な心地よさに安らかな気持ちになってきて
ウトウトしてしまってきていた。
「・・・もう眠るのか?」
「え・・・?テリーは?眠らないの?」
「あ・・・いや、別に眠ってもいいが・・・」
「はは、なんだよそれ」
テリーの言い様に顔を緩ませる。ふぁと大きな欠伸をして、早々に明かりを消した。
「うん・・・じゃあ、おやすみ、テリー・・・明日は・・・ガンディーノに行こうね・・・」
眠りの淵に消えかかった意識でそう伝える。と
「・・・・・・ユナ」
その言葉に、消えかかった意識が戻された。
「・・・ん・・・?なに・・・?」
「・・・・・・いや・・・悪い、なんでも、ない」
「・・・どうしたんださっきから?何か変じゃないか・・・?」
「別に変じゃ・・・・・・」
答え終わらない内に、よほど眠いのか自然とベッドに沈んでいくユナに
また反射的に声を掛けてしまった。
「・・・ユナ」
「・・・だから、どうしたんだ?」
沈んでいく体と意識を何とか押し戻して答える。
テリーは起きあがって、ベッドに座った。そしてもの凄く言いづらそうに
「・・・・・・そ・・・・・・・・・そっちに行っても・・・いい・・・か・・・?」
赤面して、多分そう言った。
「・・・・・・えっ?」
予想だにしなかった言葉に耳を疑う。
「い、いや!何でもない!忘れてくれ!」
ぐしゃぐしゃ頭をまさぐって、再びベッドに横になる。
「えっ?えっ?い、一緒に寝たいって事」
「・・・・・・・・・」
テリーは何も答えなかった。
ユナも唐突な彼の言葉に眠気が冷めてしまっていた。
「・・・・・・」
しばらくしてテリーの布団の中に暖かい体温を持ったものが潜り込んでくる。
「テリーがそんな事言うなんて、ちょっとビックリしたな」
潜り込んできたユナが、肩の所でぼそりと呟いた。
入浴したばかりでまだぽかぽかしていたユナの体は冷めた体温に心地良かった。
「でも、凄い嬉しいかも・・・」
クツクツと笑うユナに恥ずかしさを紛らわすためかテリーが呟く。
「せ・・・狭いな・・・」
「だって、一人用だろ、このベッド」
よほど嬉しかったのか、まだ笑っているユナに
自分で言った事がもの凄く恥ずかしく思えてきてぎゅっと目を伏せる。
「・・・じゃあ・・・おやすみ・・・テリー・・・」
テリーの体にぴったりとくっいたまま、そう呟いて目を閉じた。
「・・・・・・あ・・・ああ・・・おやすみ・・・ユナ」
ユナの体温を感じて少し安心したテリーもようやく夢の世界へと瞳を閉じた。
宿で朝食を摂った後、再びエリザの家に向かった。
出迎えてくれた二人とルドマに、式の日取りと場所を伝えると
今度はテリーとユナの故郷、ガンディーノへ向かうためキメラの翼を放り投げた。
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