▼安息
「雨・・・止まないな・・・」 青いマントを羽織った少女が、分厚い雨雲を眺めながら呟いた。 サンマリーノの城壁の外。魔物がすっかり大人しくなったこともあり 夜になっても街門は開いてはいたが、ユナはまだ決心が付かなかった。 ミリアさん-------素敵な人だったな。 ハァと心の中でため息をつく。 テリーの今の恋人で、一緒にサンマリーノに住んでるとか・・・。 ミリアの隣にテリーの姿を思い描いてしまう。 やっぱり、オレは見捨てられたのか? そんな嫌な予感は口には出せなかった。 それに・・・テリーがここに来て三ヶ月過ぎてるとか。オレは三ヶ月ずっと あそこに放っておかれたのか? 「・・・・・・」 ぶるっと寒気がする。遠くに聞こえる喧騒が何故か寂しさを誘った。 「テリー・・・・・・」 街壁を背にずるずるとその場にうずくまった。 「テリー・・・・・・」 拒絶された事、置いて行かれた事、ミリアさんって恋人が居る事。 たまらずユナは顔を伏せた。 拒絶される事にも、相手にされない事にも慣れてた------ だけど 彼の体温を知ってしまった。 愛してると言ってくれた彼の甘い声も、唇も、忘れられない。 いっその事知らなければまだ傷つかずにすんだかもしれないのに。 もう今はそれから逃れられる術が無い----------。 「テリー・・・・・・」 やっぱり会いたい。拒絶されても、迷惑でも、遠くからでも良い 一目でも会いたい-------- 冷たい雨が降りしきる中。 夜も更けてますます視界が悪くなる街並みをテリーは夢中で走っていた。 雨が降っているせいか、人通りは全く無い。 そんな中、テリーは必死で目的の人影を探した。 どこなんだ どこに居る ずっと押し込めてきた思い出の中の姿が蘇る。 それは2年経った今でも鮮明に蘇ってきて、テリーの足を速めた。 声も、体温も、笑顔も、泣き顔も 考えている間に、いつの間にかサンマリーノの街門まで来てしまっていた 何処をどう走ってここまで来たのか全く覚えて無い。 テリーは確信のないまま街門を抜け、街道にまで飛び出した。 テリーの足は今度こそ意志を持ってある場所へ向かっていた。 雨に濡れた砂漠をようやく抜けたそこは湖という名のオアシス。 晴れた日には光が差し込んで神秘的なこの林も 雨の日は薄気味悪く暗い。 必死でここまで駆けて、ようやくテリーは我に返った。 酒場から動悸は全く収まっていない。 もしかしたら、人違いなんじゃないか?ビビアンとミリアが見た幻なんじゃないか? それこそもしかしたら、オレはまだ夢の中に居るんじゃないか? 止まった世界が唐突に動き始めたせいなのか そう思わずにはいられない。 流れる雨を拭って辺りを見回した。 暗い世界はやっぱり何も見えなくて、ザアアアアアっという強い雨の音だけが 耳に響く。 やっぱりここには何も無い。 雨の音と暗い世界が弱い心の部分をやけに締め付けた。 ミレーユ姉さんが連れて行かれたあの夜と同じ黒い夜。 今まで避けていた部分が突然目覚めたかのように襲いかかってくる。 やっぱり独りなのか? 二度とあの頃に戻れないのか? これから先 もう二度と-------- 「・・・・・・っ・・・」 膝を突いて項垂れるテリーに冷たい雨が容赦無く降り注いだ。 「・・・リー・・・」 「------------っ!」 激しい雨音の中で別の音が聞こえる。 それは懐かしく甘い音で、聞き逃すはずが、聞き逃せるはずが無かった。 「テリー・・・?」 もう二度と聞けないと思っていた愛しい声 「・・・っ!やっぱり、テ・・・リー・・・!どうしたんだよこんな所で・・・ずぶ濡れじゃないか 風邪ひくぜ・・・?」 もう二度と見ることの無いと思っていた姿。 やっぱりまだオレは夢の中なのか?あれからずっと覚めずに居るのか? 「ってハハ・・・言ってるオレもずぶ濡れなんだけど・・・」 夢だと思いながら、動けなかった。夢なら、いつもこんな所で目が覚める。 いつだって、あいつに触れたら全て消え去って現実に引き戻される。 「ごめ・・・オレ・・・本当は帰った方が良いのかなって思って・・・一目テリーに 会ったら、帰ろうかなって思った・・・んだけ・・・ど・・・」 で・・・も、 と苦しそうに言葉を続けて 「言うつもり無かったんだけ・・・ど・・・会うだけじゃ気持ちの整理が、つかなくて・・・っ オレ・・・オレまだ・・・テリーの事が好き・・・で・・・っ・・・」 雨の中でも、その言葉は一言も漏らさず耳に入ってくる。 「ミリアさんの事は知ってるけど・・・諦めるならテリーの口から--------」 テリーは立ち上がると、力の限り抱きしめた。 夢でもなんでも良い。触れて現実に引き戻されても良い。 これ以上我慢する事なんて出来ない-------- 「テ・・・リ・・・っ・・・!」 言葉を塞ぐように口付ける。 我慢なんて出来るはずがない------ 「あ・・・の・・・っ」 一瞬だけ唇を外して絡みつくような深いキス。 長いキスの間に雨は止んで、微かに見えた雨雲の隙間から月明かりが照らす。 月明かりに照らされた人影は、やっぱり自分が待ち望んでいたその人で。 テリーはキスを止めその人影を見つめた。 「ユナ・・・・・・」 まだ、夢は覚めない-------- 「うん・・・」 青いマントの少女は、何故か瞳から大粒の涙をこぼして、自分の胸で泣きじゃくっていた。 苦しいほどの胸の切なさが酷く懐かしい。 「ユナ・・・!」 「・・・・・・うん・・・」 切なさと愛しさに駆られて強く抱きしめる。 「ユナ------!」 抱きしめたその体は、まるで現実であるかのように暖かい。 再びテリーはユナの唇を求めて、青いマントを脱がせた。 「・・・・・・っ」 ユナの体がビクリと反応する。ゆっくりと唇を外して 「抱きたい・・・今、ここで」 アメジストの瞳が懇願した。 「・・・いいか・・・?」 「・・・・・・」 断る事も、断る理由も無い。 「そ、そんなの、いいに決まってるだろ・・・」 恥ずかしそうに即答する。懐かしいその返答。 テリーはたまらなくなって、ユナを押し倒すと服を脱がせる事も我慢出来ないまま 行為に及んだ。 「は・・・っ・・・ん・・・あっ・・・テリ・・・っ!」 唇を首筋に這わせ、胸の感触を確かめる。 サラシを巻いていないのかインナーの上からでも胸の柔らかさを感じて ゆっくりと揉みし抱く。 「・・・っ・・・ふ・・・ぁ・・・っ・・・」 揉んでいる間にインナーがずれて、大きな胸が零れた。 つんと立った乳首が待ちきれないように震えている。 「ユナ・・・」 乳首に舌を這わせると、ビクンっと思い切り反応して大きな胸が揺れる。 わざといやらしい音を立て、舌で執拗に乳首を責め立てながら、服の隙間からユナの陰部を確かめる。 「んんっ・・・あっ・・・あっ・・・あぁっっ」 もうそこは熱い液で満たされていて、触れただけで指がぬるぬると入っていく。 「あ・・・んぁ・・・っテリー・・・っ・・・」 「ああ・・・いくぞ・・・」 我慢出来ずにズボンだけを下ろし、服の間から挿入した。 「はっ・・・や・・・っ服・・・ぬが・・・せっ・・・」 ユナの言葉とは裏腹に、中はテリーのモノを一気に飲み込んだ。 「う・・・っ・・・く・・・!」 2年振りの行為はテリーに余裕を与えてくれない。 熱くてたまらないユナの中は居るだけで全てを吐き出してしまいそうだ----- 「や・・・ぁ・・・んんっ・・・テリー・・・・っ!」 「----------っ!」 ユナが自分の名を呼んだ所で、テリーは我慢出来ず放出した。 「悪い・・・我慢出来なかった・・・」 気恥ずかしさにそう呟くと、テリーはユナの服を全て脱がせる。 「テリ・・・っ」 「これでいいだろ・・・?」 「う・・・んっ・・・」 そう言うとユナの足を開き、正常位で再び侵入した。 「ひゃっ・・・あっ・・・あぁっ・・・んん・・・っ!」 初めての夜のように、テリーはユナの中を何度も何度も突き上げた。 「やんっ……あっ、ああっテリー・・・っテリィ・・・っ!」 「はぁっ、あぁっ、あぁ・・・ユナッ・・・!」 これはきっとリアルな夢--------。気持ちよさにまどろむ中テリーはそんな事すら思った。 これが一生、覚めない夢ならどんなに良いだろう--------- 「あンっあっあっ・・・んっ・・・んぅっ・・・テリー・・・っ!」 「ユ・・・ナッ・・・ユナッ・・・ユナッ!」 それはきっと望むべくもない事。 だが今だけは快楽におぼれていよう。今この瞬間だけは------- 「テリー・・・テリー・・・!」 ・・・・・・ほら、みろ。 あれは全て夢だったんだ。眠っていた思考が引き戻されてテリーは渇いた笑みを漏らした。 そうだ、あいつは 「----------」 「・・・テリー。こんな所で寝たら風邪ひいちゃうよ?服だって濡れてるんだしさ・・・一度 宿に戻った方がいいよ」 「----------」 呆然とするテリーに、ユナは服を手渡した。 「これ着て、サンマリーノに戻ろうぜ?・・・もういい加減街門も閉まっちゃうよ・・・?」 濡れたインナーと青いマントを不快そうに着込んで、そう自分に促した。 「テリー・・・?・・・起きてるか?」 突然ユナの背に力強い手が回る。上半身だけ起こしたテリーはユナの胸に顔を 埋め再会した時以上に強く抱きしめる。 「ユナ・・・お前・・・まさか・・・本当に・・・」 「・・・っ!・・・テリー・・・どうしっ・・・」 膝をついてテリーと視線を合わせると、テリーの唇がユナの唇を捕らえた。 「・・・・・・っ!」 テリーはそのまま深く深く求めて、ユナの暖かさを実感して 長く経った頃ようやく唇を外した。ユナは相変わらず赤面して 「テリー・・・どうしたんだよ・・・?」 「・・・バカ・・・!それはこっちの台詞だ!」 消えない、夢じゃ無い。 「もう二度と・・・会えないかと・・・」 その台詞が自分自身を苦しめる。 今までの2年間が走馬燈のように思い出されてきて、胸が押しつぶされそうになった。 「テリー・・・?」 心配げに、そう覗き込む。 イエローブラウンの短い髪も、宝石のような瞳も、耳元で揺れるスライムピアスも 何も変わらない---------- 「・・・ユナ・・・・・・」 もう二度と呼ぶことも無いだろうと思っていた名前。 口にした途端抱きしめたくなる衝動に駆られ、テリーは唇を噛みしめた。 「うん・・・」 覗き込む瞳がたまらなく懐かしくて愛しい。 さすがに我慢出来なくて、もう一度テリーはユナにキスをした。 「・・・・・・っ!」 軽い挨拶のようなキス。それでもユナは真っ赤になって、どうしたら良いのか 分からないようで、視線をあちこちに彷徨わせた。 その仕草はようやくテリーに確信を持たせた。 「本当に、ユナなんだな・・・」 「うん、見て分からないか?」 そして突然不安げな顔をして 「もしかして・・・確信が無いままあんな事してたのか・・・?」 なんて、いつもの馬鹿な事-------- いつものユナの台詞--------- いつものこの雰囲気--------- 「・・・・・・・・・」 テリーの世界が一気に広がっていった。気持ちの良い朝のように世界が照らされて ようやく心に風が吹いた。 「バカ・・・」 潤む瞳に気付かれないようテリーは慌てて服を着る。 全て着終わった所で、ユナは定まらない視線で 「テリー・・・テリーにはミリアさんって・・・恋人・・・が居るって事知ってるからさ・・・ オレ・・・オレさ・・・」 嘘の誤解に振り回されている事にようやく気付いて、テリーが訂正しようとすると 「二番目の女でも良いよ!」 なんて、意を決したように言う物だから。 「バカ!」 今度はユナの頭を軽く小突いた。 こいつは本当に------人の気も知らないで------------ テリーは久々に心の底から笑った。
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