▼ミリア


「保存食も・・・衣服も充分だな。それにしてもお前・・・本当にルーラ大丈夫なのか?」

 部屋に戻って鞄の中を確認している中、テリーが不安げに問いかけた。

「大丈夫だって、レイドックだろ?レイドックなら印象に残ってる場所沢山あるし」

 胸を張って自信満々に言う彼女に忠告する気もなくなった。
それに、うまいことレイドックに付けばこれ以上幸いな事は無い。
ユナが消える前にダークドレアムの魔力の謎を解かなければ・・・・・
その為には船旅で時間を無駄にするより、一瞬でレイドックに付く方がどれだけ
助かるか。
あの日、ユナが消えて以来訪れることの無かったレイドックだが
あそこには大きな図書館が有る。行けばきっと、知らなかった何かが分かるかもしれない。
考えながら全て準備を済ませると

「その前に・・・ビビアンの所に寄っていくか」

 既に準備の終わっているユナに問いかけた。

「?珍しいね、テリーがそんな事言うなんて・・・」

「挨拶くらいはしないとな、また心配かけるだろ?」

「そりゃそうだけど・・・」

 記憶の中のテリーは人を気遣う事を知らなかったのだが。
2年で少しは周りに順応するようになったのか?
それがユナには嬉しかったが、なぜか顔を曇らせた。

「オレ・・・ミリアさんに合わせる顔ないよ・・・」

「・・・なぜだ?」

「・・・だって、ミリアさんテリーの事好きなんだろ?オレ・・・なんてかその・・・
行かない方が良いんじゃないか・・・?」

「・・・・・・」

 少し考えてテリーも返す言葉を無くす。女は、男と違ってこういう事には
酷く敏感だ。テリーは荷物を抱えて

「・・・お前の好きなようにすればいい」

 そう言って出て行こうとする。ユナも慌てて荷物を抱え後に続き
重い足取りで酒場を目指した。

朝の酒場-----
clozeと書かれてある札がつり下げられているドアをテリーはお構いなしに開いた。

カランカランという呼び鈴がなる。
さすがに自分だけ行かないってわけにいかない。
ユナは腹をくくった。

「よっご両人〜〜〜!!来たわね!」

 ビビアンが高いテンションの声で迎えてくれた。

「昨日の夜、テリー帰って来なかったから、こうなると思ってたのよ!
あーそれにしてもほんと良かった良かった!」

 中を見渡すと相変わらずのビビアンとマスター。そして、カウンターには
昨日お世話になった人物。

「そっ。私のお陰よ、感謝してよね!」

 その人物は予想外にも明るい声。ユナはその様子に驚いて見つめると
視線がばっちりあった。
その人物------ミリアは、無言でユナに詰め寄ると、がばっとユナを抱きしめて

「ごめん、ね」

 そう耳元で呟いた。




「もう行っちゃうの?ほんとあんたたち忙しないのね」

「ああ、少し急ぎの旅だからな」

 挨拶を済ませ、テリーは再び荷物を持った。来る前と随分表情の違うユナも
笑顔で荷物を抱える。

「ビビアン、マスター、ミリアさん、元気でな!」

 手を振るユナに、ミリアが

「素直なのもいいけど、人の事を信用するのもどうかって良い教訓になったでしょ。
この私が身を引いてあげたんだから、ずっとテリーの事捕まえておかなきゃダメよ」

「はい!」

 やっぱり素直にユナは頷いた。
こんなんじゃまたすぐに騙されそうだ・・・。だけどこれが彼女の魅力なのか。
自分には無い純粋さを感じて、またミリアはこみ上げてくる物を必死でこらえた。

「よしっ!それじゃユナにテリー!またサンマリーノに来なさいよ!
とっておきの躍りを見せてあげるから!」

 ミリアの笑顔の裏にある苦しいなにか。
それを知っているマスターとビビアンは二人に感づかれないよう言葉を続けた。

「テリー君がいなくなったら客足が減っちゃうなぁ」

「ずっとここにいればいいのにねっ二人揃ったらほんとすぐどっか行っちゃうんだから〜」

 テリーはここへ来て初めて笑顔を見せた。

「またいつかここに帰ってくるさ。それじゃあ、世話になったな」

「またなっ!」

 ユナもテリーの笑顔に続く。
ドアの向こうに消えていく二人を見送ると、三人に虚しい風が吹き込んできた。

「・・・・・・初めて見た・・・」

「え?」

「テリーと会って、三ヶ月経つけど・・・テリーの笑った顔なんて初めて・・・」

 苦しそうなミリアの呟き。ビビアンとマスターは顔を見合わせ言葉を探した。

「そうね・・・」

「三ヶ月前ここへ来た時は、まるで死に場所でも探してるみたいだったからね・・・」

 重い空気が更に包んだ。
その空気をビビアンは無理矢理振り払った。

「それにしてもミリアッ!あんた良く頑張ったじゃない!!笑顔で見送れるなんて
そうそう出来る事じゃ無いわ・・・・・・」

 壁に体を預け震えるミリアを見て言葉が止まる。

「バカ・・・私は・・・あんたとは違うのよ・・・あれぐらいの事なんてどって事無いのよ・・・」

「ミリア・・・」

「ミリアちゃん・・・」

 ビビアンは、震える肩にそっと手を置いた。

「今夜は飲もっ!私のおごりでぱーっとさ!」

 ようやく振り向いたミリアの顔は化粧が落ちてしまうほど涙で溢れていた。

「私の・・・気の済むまで・・・っ付き合ってもらうからねっ・・・・・・!」

「望むところよ」

 渡されたハンカチで顔を拭う。
これでミリアの報われない恋が終わるのなら安いものだった。




「良かった・・・ミリアさん元気そうで・・・」

「そうだな」

 ミリアの頑張りが報われたのか、二人は暢気な会話を交わしていた。

「請け負う予定だった依頼も断ったんだって?」

「ああ、もう必要無いからな」

 テリーは上機嫌になると情報を漏らすダイモンと言う男を思い出していた。
何処から請け負うのかやっかいな依頼を持ちかけてきた男。
世界中の妙な噂に精通していて、テリーには有り難い存在だった。
願いを叶える木の実。天空へと続く塔。
だがもう今のオレには必要無い--------

「良い依頼だったんだろ?ちょっと勿体なかったな」

「別に。金が欲しくてやってたわけじゃない」

「・・・え?違うの?」

 うっかり、口が滑った。
見つめるユナに嘘を付くのも忍びなく思えてそのまま言葉を続ける。

「オレが欲しかったのは、情報だ。馴染みの依頼主は不思議な噂に精通していたんだ。
気に入られるに越した事は無いだろ」

「情報・・・?」

 ユナはまだ意味が掴めていないようだった。

「どうしても、叶えたい事があったんだ」

 立ち止まって、見つめる。

「最強の剣?そうか、それの情報か?」

「-----------」

 元は自分の言動のせいだろうが鈍すぎる・・・。
本心で言ってるから余計タチが悪い。
テリーは息を突くと踵を返した。

「宿に忘れ物をした。お前も来い」

「えっ!ちょっと待ってよ!」

 もうすぐ港・・・と言う所で二人は再び来た道を引き返した。
馴染みの主人のお陰ですんなり同じ部屋に戻る事が出来た。
テリーは荷物を下ろし、ユナにもそう促す。ユナはキョロキョロ部屋中を見渡して

「忘れ物って・・・なん・・・!」

 まさに不意打ちでキスされ、驚いて腰が抜けた。
そのままベッドへ腰掛ける。テリーはキスをしたまま剣を下ろし、マントを脱がせた。

「えっ、あっのっテリー・・・忘れ・・・もの・・・はっ・・・」

 唇を塞いで、深くキスをする。テリーの舌がユナの口内に侵入してきた。

「ん・・・んん・・・っ」

 舌を絡ませあって二人は熱く求め合った。体が十分に火照るとテリーはキスを止めた。

「テリー・・・忘れ物って・・・」

 テリーは呆れたように笑って、着ていた鎧を外した。
ドスンとユナをベッドに押し倒して覆い被さる。

「オレが叶えたかった事、まだ分からないか?」

 吐息を感じるほど近くで、テリーはユナを見つめる。

「最強の剣の事じゃない」

 さ・・・という言葉が出かかったユナに釘を刺す。
分からないのか答えようとしないユナのベルトをゆっくりを外した。

「ちょっ・・・テリー・・・」

 抵抗できず、服を脱がせにかかるテリーを見つめる事しか出来ない。

「・・・・・・っ!」

 手慣れた手つきでインナーを脱がせていく

「・・・あっの・・・っ・・・・・・間違ってたらっゴメン・・・・・・!」

 全て脱がせた所でユナが赤面して声を上げた。

「・・・もしかして・・・叶えたかった事って・・・・・・オレ・・・・・・?」

「・・・気付くのが遅い」

 テリーは手袋を外して、大きな胸を弄びながらユナを見つめた。

「・・・っん・・・あっのっ・・・ほっほんと!?」

「ホントに決まってるだろ・・・」

 胸から濡れている秘所へと指が伝わる。

「テリー・・・ありが・・・と・・・っうっ・・・ふっ、うん・・・っ」

 指で感じさせながらユナを見つめる。薄いカーテンだけの明るい室内で
やるのは初めてで、ユナは恥ずかしそうに目を伏せて声を耐えた。
テリーは初めての状況で理性が飛びそうになったが
まだ、指でユナの中を責めながら顔を見つめた。

「テリー・・・恥ずかしいから・・・も・・・う・・・は・・・んぁぁっ・・・」

 大きな胸が震えて、乳首はもうすっかり硬く立ち上がっている。
わざとテリーは行為を止めた。

「・・・っ・・・・・・」

「恥ずかしいならもう止めるか?」

 そんな事をしたら自分のモノが収集付かないのだが、敢えてテリーは
意地悪な質問をした。

「・・・・・・」

 ユナは視線を彷徨わせて

「・・・・・・ごめ、恥ずかしくない、から・・・その・・・・・・続けて、欲しい・・・」

 潤む瞳で懇願するユナに更に興奮する。
なかなか信じないから、少し意地悪をするつもりだったが
もうこの辺にしよう。これ以上我慢すると、自分が保たない--------

「ん・・・・・・!」

 テリーはユナと同じように全て服を脱いで、濡れている中に挿入れた。
動かす度にユナの甘い声が響く。
朝からこんな事、とか、周りに聞こえるんじゃないかとか、そんな意識は二人の中から
飛んでしまっていた。

ただ、触れて、ただ、その存在を確かめ合いたい。

二人はただそれだけを求めていた。



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